傘を使っているときに困ることとして、髪の毛が骨に引っかかることと並んで、傘を開いたり閉じたりするときに指を挟んでしまうことが挙げられます。
主には、ハジキとロクロの間に肉(皮)を挟んでしまった、ロクロという部品と中棒の隙間に肉(皮)を挟んでしまった、というものと思われます。
両手を使って慎重に開け閉めすれば防ぐことはできると思いますが、急いでいるときや何も考えていないときなどに思わずやってしまうということが多いようです。
実際にどのような仕組みで挟んでしまうのか、挟まないようにするにはどうするのがいいか、についていろいろな角度から検討してみました。
傘の困りごと 傘に指が挟まれる問題を検証する
傘に指が挟まれる問題を検証する
状況紹介 国民生活センターより
閉じようとして指を挟まれた長傘(相談解決のためのテストから NO.158)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20211104_4.html
消費生活センター等の依頼に基づいて実施した商品テスト結果をご紹介します。
「長傘を閉じようとしたところ、下ロクロに指を挟まれた。商品に問題がないか調べてほしい。」という依頼を受けました。
当該品は、手開きの長傘で、相談者によると、当該品を購入して初めて使用したとき、傘を開いて閉じようとしたところ、勢いよく傘が閉じ、下ロクロと中棒の隙間に指の皮膚を挟まれてけがをしたとのことでした。
当該品及び同型品について、傘を閉じる際に下ロクロが手元方向に押される力を測定したところ、傘が開いた状態から下ロクロを3cm手元方向に下ろした位置では約10N(約1kgf)と最大となり、その後、手元に近づくにつれ小さくなりました。
下ロクロと中棒周りを観察したところ、当該品及び同型品の下ロクロの下端と中棒とには隙間は2mmあり、下ロクロを切断して断面を観察したところ、下ロクロの下端の縁は鋭利な形状となっていました。
下ロクロを持って傘を閉じたときに指の皮膚が挟まれるかどうか、当該品及び同型品を使用して再現テストをしたところ、指の代替物として薬指の手のひら側にあてがったソーセージが、下ロクロが勢いよく引き下ろされているときに、下ロクロと中棒の隙間に巻き込まれ、2~3回に1回程度の割合で皮が破れました。
以上、当該品は、下ロクロと中棒との間に隙間があり、下ロクロの下端部の縁が鋭利な形状であったため、傘を閉じる際に指の皮膚が巻き込まれて挟まれたものと考えられました。
依頼センターがテスト結果を事業者に説明したところ、事業者から「『開閉時に手や指を挟まない様十分に注意してご使用ください。』との注意文を添付するとともに、次期製造商品については手や指を挟まないよう、隙間を生じない、端部が鋭利でない形状に設計変更する。」との回答がありました。
原因その1
手開きの傘の「上はじき=傘が閉じないように中棒上部の溝に組み込まれたパーツ部分」をボタン感覚で扱っているから。
ジャンプ式(ワンタッチ式)のボタンに慣れた人が、この使い方で挟むことが多いと考えられます。
指1本だけで「上はじき」だけを押す(押さえまる)と、張りの強さが強い傘ほど閉じる時のスピードが速くロクロが落ちてきますので指を挟む確率が高くなります。
対策その1:閉じ方のポイント
・片方の手の親指と人差し指で、下ロクロを少し持ち上げ、中指もしくはもう一方の手で上はじきを押します。
・そのまま、持ち上げていたロクロを下にスライドさせて閉じます。
・そうすると、指を挟まずに閉じることができますので、安全ロクロがない手開きの傘をお使いの方は、ぜひお試しください。
対策その2:安全ロクロ
開閉時の指挟み防止のため、「安全ロクロ」を使用している傘があります。
この安全ロクロとは、傘を閉じる際に押す金具(=上ハジキ)を保護するかたちでカバー(=押しボタン)が付いており、傘を「閉じる」際に、このボタン部分を押すことで、指と金具との接触を避け、指詰めや怪我の可能性を防ぐものです。
この機能は、傘を閉じる際にのみ機能しますため、開く時に安全カバーのボタンを押して開くと、傘を広げた際に上部でしっかりと止まらず、傘が固定されずに閉じてしまうことがあります。
開く時には安全カバーを押さずに上げて、 カチッと音がするまで押し上げながら傘を開きます。
安全カバーはとても繊細なので、強く押し込んだりせずに そっと触れてあげる程度で大丈夫です。
その他の原因
例えば、傘を開く際にスライドする部分が滑らかでない、または開閉機構が硬すぎることが挙げられます。これにより、力を入れ過ぎてしまい、指が挟まれるリスクが高まります。
また、急いでいるときや注意が散漫な状態で傘を操作することも、事故の一因となります。
対策としては、まず傘の品質に注意を払うことが重要です。滑らかな開閉機構を持つ傘を選ぶことで、指を挟むリスクを減らすことができます。
また、傘を開閉する際は、挟まらないように手をロクロや中棒から離して操作することが推奨されます。
挟まないポイント
・両手を使って開閉する
・片手の場合の指の使い方をマスターする
・安全ロクロの傘にする
・ダブルジャンプ傘、楽ミニ(簡単ミニ)傘、クイックアーチ(クイックオープン)傘にする(ロクロに触れないタイプ)
・手袋をする
もし挟まってしまったら
万が一指を挟んでしまった場合は、迅速な対処が必要です。
軽度の場合は、冷やして腫れを抑え、痛みを和らげることができます。
しかし、出血が見られる場合や、指の動きに異常がある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
内出血やしびれがある場合には、神経や血管に損傷がある可能性があり、専門的な治療が必要になることもあります。
まとめ
今回は、傘を開け閉めするときに指の肉(皮)を挟んでしまうことについて、まとめてみました。
その他の傘の取扱い時に注意することとして、冒頭にも挙げた骨に髪の毛が引っかかること、ダブルジャンプ傘をたたむ際にバネの力が強く中棒が飛び出してしまうこと、などもあります。
傘に関連する事故を防ぐためには、使用する際の注意深さと正しい知識が不可欠です。
日常的に使用するアイテムであるため、安全な使用法を身につけることで、不快な経験や怪我を防ぐことができます。
また、傘の設計者や製造者は、安全性を考慮した製品開発に努めることが求められます。
消費者としては、安全機能を備えた傘を選ぶことで、このような事故のリスクを減らすことができます。
そして最終的には、傘を使用する際の注意と適切な対処法を理解し、日々の生活の中で実践することが、自分自身や周囲の方への安全に結びつきます。ケガをしたりさせることのないように注意して傘を使いましょう。