傘を取り巻く環境

製品のライフサイクル 流行っているモノもいつかは無くなる?

製品のライフサイクル

皆さんの身のまわりにある製品について、昔からの定番品もあれば最近出たばかりの製品、消えてしまって手に入らない製品など栄枯盛衰を常に感じているのではないでしょうか。
自分のお気に入りの製品はいつでもあってほしいものですが、必ずしもそういうわけにはいかないですし、自分の趣味が変わることもあると思います。
傘は、色や柄などの定番はありますが、〇〇社の△△といった形でずっと続く製品は国内ではあまり見かけません。
そこで傘に限らずいろいろな製品の世の中に出回る寿命(ライフサイクル)について考えてみました。

製品ライフサイクルの区分

製品の導入から衰退までのプロセスを製品ライフサイクルといいます。
製品ライフサイクルのプロセスは一般に、①導入期、②成長期、③成熟期、④衰退期の4つに区分され、売上高や利益は図のように推移していきます。

①導入期

新製品が初めて市場に登場する導入期は、製品の知名度や認知度が低いため製品はあまり多く売れず、売上は緩やかにしか増加しません。また、生産設備をはじめとした先行投資や宣伝広告費も必要なため、多くの場合赤字となります。

②成長期

時間の経過とともに製品の認知度が高まり、製品を欲しがる人が増え、売上が加速度的に伸びてくるこの時期のことを成長期と呼びます。この時期には参入企業も増え、販売価格も手頃になってきます。

③成熟期

製品が顧客にかなりいきわたり、売上が伸びる勢いが弱まってくると成熟期に入ったといわれます。成熟期には利益は安定し最大になるものの、市場の成長が鈍くなります。参入企業数も多いため過当競争が発生し、値崩れから利益率が悪化します。

④衰退期

時間の経過とともに製品自体が顧客のニーズに合わなくなる、あるいはもっと魅力ある新製品に世代交代することで売上が減少しはじめる時期のことを衰退期と呼びます。この時期には、撤退企業も増え、売上も先細り感が強まります。

このように製品ライフサイクルという切り口からある製品をとらえると、企業がその製品からどのように利益をあげていこうとしているのか、あるいはなぜ新製品を出さずに、そういった手を打つのか、などの戦略を予想することができます。

マーケティング戦略の原則


製品ライフサイクルという視点で市場を見ると、企業のマーケティング戦略には以下の図のような原則がでてきます。

導入期成長期成熟期衰退期
マーケティングの方法製品認知と試用の促進シェア拡大シェア維持・利益最大化コストは極力かけない・ブランドの収穫
マーケティング費用徐々に低下最小
ターゲット革新的採用者初期少数採用者前期・後期多数採用者採用遅延者
製品戦略基本的な製品を提供生産ライン拡張・サービス充実ブランドと製品の多様化モデルの段階的排除
流通戦略選択的流通の構築開放的流通の構築開放的流通の拡張選択的流通
価格戦略コストプラス市場浸透価格競合以下の価格値下げ
広告戦略大規模広告と販売促進縮小して増加した需要を利用ブランドスイッチング促進のための拡大最小レベルへ縮小
導入期

新製品を市場に投入するとき、競合よりも早く市場に参入できれば、その後の利益は極めて大きくなります。しかし新しい市場に参入するリスクは大きく、費用もかかります。
まだ多くの顧客がその製品のことを知らない状態なので、マーケティング方針は市場での新製品のステータスや、認知度を確立することです。

折込チラシ
フリーペーパー折込
チラシ配布
フリーペーパー広告
ローカル雑誌広告
雑誌広告
イベント開催
成長期

マーケティング方針は市場シェアの拡大にありますが、シェア拡大に惹かれて参入企業も増えていきます。そのため、シェア拡大のための戦略は、生産ラインの拡張、製品の改良、サービス拡充、広告メッセージの変更、価格の引き下げなどの施策をとることになります。

新規顧客
テレビCMや新聞広告などのマス広告
電車中吊り広告
駅構内広告
バス広告
タクシー広告
ラッピング広告
大型ビジョン広告(人通りの多い場所に設置されたディスプレイでの広告)
リピート顧客
DM(ダイレクトメール)
メールマガジン
カタログ通販
ポイントカードの発行
会員登録
成熟期

市場の成長率が低下する成熟期でのマーケティング方針は、シェアを維持しつつ、利益を最大化することにあります。企業の方針としては、ブランドと製品を多様化することでターゲットをひろげ、それにあわせて流通チャネルを拡大し、競合並みかそれ以下に価格を下げるという施策がとられます。

衰退期

衰退の原因は、技術革新、競争の変化、ニーズの変化など様々であり、市場の見極めは難しいと考えられます。
市場に残っている企業は、維持コストのかかる製品を排除し、利益の出る製品やチャネルをしぼりこんで、プロモーション費用の削減や、価格を下げるという施策をとることになります。

製品ライフサイクルについて一般的な例を見ましたが、その他にもいくつかの種類があります。その特徴的なものを見てみましょう。

定着型

定着型は、製品が社会に定着し、成長もしない代わりに衰退もしない安定して長期的に続くプロダクト・ライフサイクルです。「ブーム型」(boom)や「クラシック型」(classic)と呼ばれたりもしています。
定着型の特徴は、もちろん衰退期がほとんど訪れないことです。もし、衰退期が訪れるとすれば、それは業界内で代替品が販売され、ブランドスイッチが起きた時でしょう。
例えば、社会の土台となっている石油や鉄、小麦といったコモディティ製品は、価格変動はあるものの、需要は長期的に安定しています。他にも、現在社会に欠かせない電力や水道のライフライン、文化に統合されているフォーマルな洋服、定番の生活必需品など、業界内で定番となっている製品は、長期安定して売上を維持できます。傘も製品のカテゴリーとしてみた場合はその一つといえるでしょう。
傘の中でも男性の日傘はまだ社会に定着していない状態のため、ある程度定着した後は定番の生活必需品となり衰退もせず永く続くのはないかと考えられます。

最後に


プロダクト(製品)ライフサイクルという製品の市場における寿命について見てみました。このような考え方を知っていると、欲しい商品があった時にこれは今どの時期にあるのかな?もっと売れてバリエーションが増えるのかな?それとも今を逃すと手に入らなくなるかな?など予想できるようになります。
目が肥えてきたら自分なりの世の中に対するアンテナが整ってきたといえるかもしれないですね。
傘についても、新しい機能が付いたときに積極的に皆に受け入れてもらえるのか、定着するのか一時的なモノになるのか、もしくは全く歯牙にかからないか、なんとも気になってきますね。