傘を取り巻く環境

日本製の傘とは?

日本製の傘とは?

メイドインジャパンに信頼を持っている方は多いと思います。
ただし現代は世界中の国々が複雑にサプライチェーンに絡み合っていて日本だけで成立するものは少ないのが現状です。
それでは傘についてはどうでしょうか?
中国でたくさんの傘が作られていることは傘全集でもお伝えしていますが、日本製を謳っている傘もお店で見かけると思います。
傘は何をもって「日本製」と表示することができるのか、についてお伝えします。

製品の表示ルール

法的な根拠と基本ルール

1. 家庭用品品質表示法

傘はこの法律の対象で、以下の表示が義務付けられています:
o 傘生地の組成(繊維名と混用率、または樹脂の種類)
o 親骨の長さ(cm単位、±5mmの許容差)
o 取扱い上の注意(強風時の使用禁止など)
o 表示者名・住所・電話番号(責任の所在明示)

2.景品表示法(不当表示の禁止)

「日本製」と表示する場合、消費者が誤解しないよう、原産国を正しく示す必要があります。
虚偽や紛らわしい表示は違法です。

傘(アンブレラ・日傘)を「日本製」と表示するためには、単に「日本で箱詰めした」だけでは認められず、景品表示法および業界団体である日本洋傘振興協議会(JUPA)のガイドラインに基づいた厳格なルールがあります。
誤った表示は「不当表示」として法的ペナルティの対象になります。

1. 「日本製」と表示するための基本ルール(原産国の定義)


景品表示法において、原産国とは「その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国」を指します。
傘の場合、以下の工程が日本で行われている必要があります。

必須条件:縫製と組み立てが日本であること

傘の製造工程は大きく分けて「骨(フレーム)の製造」「生地の製造」「縫製・組み立て」がありますが、「日本製」と名乗るための決定的なポイントは「縫製と仕上げ」です。
• 生地の裁断・縫製(コマ縫い): 日本国内で行うこと。
• 骨への取り付け(中縫い・口閉じなど): 日本国内で行うこと。
• 仕上げ・検品: 日本国内で行うこと。

重要なポイント
日本国内には傘骨(フレーム)の工場が極めて少ないため、骨自体は中国などの海外製であっても、上記の「縫製・組み立て」が日本国内で行われていれば、「日本製」と表示することが業界慣行として認められています。

2. やってはいけない表示(NG例)

消費者に誤解を与える表示は法律で禁止されています。

• NG例 1: 海外で縫製まで完了した生地(カバー)を輸入し、日本で骨にかぶせただけの場合。
→ これは「実質的な変更」が海外で行われているため、原産国は海外(例:中国製)となります。
• NG例 2: 「日本の生地」を使っているが、縫製は海外の場合。
→ 「日本製」とは書けません。「生地:日本製、縫製:中国」のように正確に書く必要があります。単に「日本製」と大きく書くと、傘全体が日本製であると誤認されるため違反となります。
注意点

• 「Made in Japan」表示は任意だが、誤解を招く表示は禁止
和風デザインや日本語ブランド名だけで海外製品を「日本製」と誤認させると違法です。

複数国で工程を分担する場合
最終的な組み立て国が原産国になる(例:カンボジアで組み立て → カンボジア製)。

3. 日本洋傘振興協議会(JUPA)の基準


傘業界の品質と信頼を守るための団体「日本洋傘振興協議会(JUPA)」に加盟している場合、またはその基準に準拠する場合、以下のJUPAマークや品質表示規定が参考になります。

項目基準
JUPAマークJUPA会員が、独自の品質基準(JIS規格など)をクリアした商品にのみ付けられるマーク。「日本製」の証明としても機能します。
品質表示票傘の内側やタグに付ける表示。「親骨の長さ」「繊維の組成」「使用上の注意」「表示者名(連絡先)」に加え、「原産国」を明記します。

まとめ

まとめると、
傘の場合は、傘の骨や手元、生地など部材が全て輸入品であっても、「生地を縫い合わせ、骨に取り付けて傘の形にする工程」が日本国内であれば「日本製」と表示できます。
食料品や工業製品など日本製といえる基準の細かな違いはありますが、日本製というだけで信頼感を与えることができるということは、先人たちの努力の賜物かと思います。
これらのようなことを心得たうえで傘を手に取って作りを吟味してみてはいかがでしょうか。