傘と文化との関係

【傘と山】雄大なる頂 垂直な大自然の傘 「傘」と名のつく山

日本は山が多く産地の割合は国土全体の75%を占めているということは聞いたことがあると思います。
「日本山名総覧」という書籍によると、2万5000分の1地形図に載っている日本国内の山の数は1万6,667もあるとのことです。
それだけあれば「傘」にちなんだ名前のついた山もあるに違いない、と思い、探してみました。

傘山 からかさやま 長野県飯島町 1542m

傘山は長野県上伊那郡にある山で、陣馬形山と一緒に立っています。
この山は伊那谷を挟んで対峙しています。東側からは伊那谷と南アルプスの絶景が見え、西側からは中央アルプス(空木岳、南駒ケ岳、越百山)が近くで見られます。
展望台や山頂からの景色は本当に素晴らしいです。初心者や家族連れにもぴったりなハイキングコースがあります。2~3時間ほどで歩け、カラマツの紅葉も楽しめます。

(追記)
「傘山は、飯島町の真上にあって傘の形に似ていることから名がついたと思われます。
三角点のある山頂は、明治44年測図大日本帝国陸地測量部の五万分の一の地形図によると飯島村(現飯島町)の所有ですが、昭和9年8月の同地形図より赤穂村(現駒ヶ根市)との境が山頂三角点近くまで表示され、現在に至っています。」 参考「駒ヶ根市誌自然編Ⅱ」

笠山 かさやま 埼玉県東秩父村 835m

東京都内から北西の方向に行くと、丹沢山地や奥多摩山地、奥武蔵の山々が見えます。
その中で一番右にそびえる山が笠山で、大霧山と堂平山と一緒に比企三山と呼ばれています。
笠山は標高は低いけど、山の形が特徴的です。河田羆という人が『武蔵通志(山岳篇)』という本を書いていて、「遠くから見ると笠(みの)のような形をしているから笠山と呼ばれている。また、乳首山とも呼ばれていて、その形が乳首に似ているから名付けられた」と書いています。
山頂には笠山神社が祭られていて、神社の中に入って休憩することもできます。

笠山 かさやま 山口県萩市 112m


笠山は、北長門海岸国定公園の中心に位置していて、山頂には直径30mで深さ30mの小さな噴火口を持つ活火山です。
この山は「萩ジオパーク」の見どころの一つで、約1万年前に噴火してできました。
その時には安山岩の溶岩台地が形成され、マグマが高く噴き上げられてできたスコリア(溶岩のしぶき)が積もって丘(スコリア丘)ができました。その形が市女笠に似ていることから、「笠山」と呼ばれるようになりました。
山のふもとには明神池があり、笠山椿の群生林もあります。
山頂へは「笠山自然研究路」というトレッキングコースがあって、おすすめです。山頂には展望台もあって、そこからは萩市街地や日本海に浮かぶ島々の美しい景色を楽しむことができます。

傘山 からかさやま 1331m  岐阜県高山市荘川町六厩

傘山は、岐阜県の高山市から郡上八幡町に続くセセラギ街道沿いにある山です。
山自体は目立たない存在で、特に西ウレ峠の近くに位置しています。この山の名前の由来は、開いた傘の形に似ていることから推測されます。

江戸時代の飛騨国中案内によれば、麦島(現在の清見村)から六厩(むまや、現在の荘川村)へ向かう峠道の説明において、この山名が登場します。
つまり、「峠から右手の東側には唐笠山(おそらく傘山のこと)やそり橋山(斐太後風土記の絵図では唐笠山の東側の山)が見えます。
これらの山は檜山として知られ、近年でも江戸幕府の御用材として重宝されました」と記されています。同じく飛騨国中案内には、小鳥川沿いに六厩へ続く街道(国道156号線)の説明もあり、「上小鳥(かみおどり、現在の清見村)にある民家の近くから北へ2町ほど進むと、峠の方向に向かって西側に唐笠山という山が見えます」と書かれています。

傘峠 からかさとうげ  京都・北摂 (935m)

ブナノ木峠と傘峠について紹介します。これらの山は、京都大学農学部の芦生研究林(以前は「演習林」と呼ばれていました)の中央に位置しています。芦生研究林は、山ではなく森の一部であり、中央を東西に走る尾根にはブナノ木峠、傘峠、八宙山という3つの頂が並んでいます。
芦生研究林の地域では、峠と言っても通常は山頂を指すことが多く、三国峠(標高775.9m)、ブナノ木峠(標高939.1m)、傘峠(標高935.0m)、天狗峠(標高928m)はすべて山頂の呼び名です。一方で、峠(鞍部)のことは坂と呼ばれています。例えば、杉尾坂、ケヤキ坂、権蔵坂などは峠を指しています。

傘杉峠 かさすぎとうげ  奥武蔵 飯能市 551m


埼玉県南西部の山岳・丘陵地帯の総称である奥武蔵の一部です。
奥武蔵は奥武蔵高原とも称され、県立奥武蔵自然公園があります。
北部は、高指山、物見山(375m)、北向地蔵、越上山(566m)、顔振峠(500m)、傘杉峠(550m)、関八州見晴台(770m)、飯盛山、苅場坂峠(刈場坂峠)と山並が続いており、県立奥武蔵自然公園(日高市・飯能市側)と県立黒山自然公園(毛呂山町・越生町・ときがわ町側)が接しています。
標高が低いのでハイキングや登山の入門コースとなっています。

国指定天然記念物「傘岩」  岐阜県恵那市


こちらは山ではありませんが、

傘岩は、1934年(昭和9年)1月22日に国の天然記念物として指定されました。
この岩は特異な風化と浸食の例であり、貴重な標本です。
傘岩は、上部が広がった傘のような形状が特徴的な岩で、高さは約4.5mです。傘の頭部の最も広い部分は幅約3.3m(周囲約10m)で、最も細い部分は数十cmの直径しかありません。
この岩は黒雲母花崗岩でできています。かつて、岩の天頂部の表面は地面に露出しており、自然の風化作用などによって補強されました。しかし、その下部は補強が行われずに柔らかいままでしたため、雨風によって削られ、現在のような形状になったと言われています。
また、すぐ近くを流れる木曽川の水位が傘岩付近まで上がっていたため、岩が削られたとも考えられています。
傘岩の周囲にはモミジが植えられており、秋には紅葉を楽しむこともできます。

まとめ

傘と名のつく山について見てきましたが、ひろげた傘の形に似ているところから名づけられることが多いようです。
その意味では比較的勾配がなだらかできれいな円錐型に近い形といえるのではないでしょうか。
また同じ漢字でも読み方が違うなど「傘(笠)」の山の名前といっても様々です。
全国には、まだまだたくさんの傘と名のつく山があると思いますのでぜひ知っている方は教えてください。傘に関連する名所旧跡情報を皆さんに提供し、自然の傘を体感していただければと思います。