読書は人によっていろいろな傾向がありますよね。
とにかくどのようなジャンルの本でも読むタイプや、特定のジャンルに偏って掘り下げていくタイプなど千差万別です。
傘全集としては、傘にちなんだ書籍を調べてみました。
すると「傘」や「パラソル」が題名に含まれる小説が、いくつか国内外に存在することがわかりました。
今回は国内の代表的な作品をいくつかご紹介します。
傘がつなぐストーリー/ タイトルに傘・パラソルがある小説を集めて
「傘」または「パラソル」が題名に含まれる小説
傘編
傘をもたない蟻たちは
著者:加藤 シゲアキ
内容:加藤シゲアキによる短編集で、「生きづらさ」や「人の痛み」をテーマにした6編(文庫版は7編)の物語を収録。
恋愛、心理サスペンス、ファンタジーなど多彩なジャンルを通じて、現代を生きる若者たちの孤独や葛藤を繊細に描いています
刀と傘
著者:伊吹 亜門
内容:幕末から明治初期の京都を舞台に、尾張藩士・鹿野師光と佐賀藩士・江藤新平が複数の難事件に挑む本格ミステリ。
動機を重視する鹿野と、手段を追う江藤の対照的な探偵コンビが、密室殺人や毒殺などを解き明かしていく連作短編集です 。

ビニール傘
著者:岸 政彦
内容:大阪の街を舞台に、名もなき若者たちの断片的な日常を描いた短編集。
視点が次々と切り替わり、主人公不在のまま、やるせなさや孤独、居場所のなさが浮き彫りになる。
何気ない出会いや別れ、抵抗できない現実を静かに受け入れて生きる姿が胸を打つ作品です。

忘れ傘
著者:半村 良
内容:雨の夜に始まった実業家とホステスの恋を描く短編。
店に置かれた忘れ物の傘が、彼女の存在と重なり、主人公はその傘を通して彼女との関係や人生の儚さを見つめ直す。
大人の恋の哀しみと余韻が漂う作品です。
梅安最合傘 仕掛人・藤枝梅安(三)
著者:池波 正太郎
内容:仕掛人・藤枝梅安が、かつての恩人でありながら非道な男・井坂権八郎を仕掛ける葛藤を描いた表題作を含む短編集。
仲間の小杉十五郎が仕掛人の道へ進む姿や、複雑な人間関係の中で揺れる梅安の心情が、江戸の暗黒街を舞台に緊張感と哀愁をもって描かれます。

傘とサンダル
著者:岩松 了
内容:砂丘に建つ故写真家の別荘に集まった人々の群像劇。
盲目の女性を含む登場人物たちが、言葉にしきれない感情や過去を抱えながら交錯し、舞台外の出来事を台詞だけで観客に想像させる構成が特徴。
人間関係の緊張と対立が徐々に浮き彫りになる戯曲です。
余った傘はありません
著者:鳥居 みゆき
内容:死期の近い女性・よしえを中心に、双子の妹や家族の記憶が交錯する不条理群像劇。
エイプリルフールを舞台に、嘘と真実が入り混じる構成で、人間の代替可能性や存在の意味を問いかける独特な連作短編です。

おじさんは傘をさせない
著者:坂井 希久子
内容:昭和的価値観を引きずる5人の中年男性が、時代の変化に戸惑いながらも、人生を見つめ直していく連作短編集。
セクハラや家庭問題などを通じて、彼らが少しずつ意識を変えていく姿を、ユーモラスかつ切なく描いています
しぐれ傘
著者:山本 周五郎
内容:頑固で純真な木彫職人の男と、彼を陰ながら支えようとする一途な女性の不器用な恋を描いた時代小説。
市井の人々の情と誠実さを丁寧に描き、清潔感ある文体で、庶民の心の温かさを伝える作品です
パラソル編
テロリストのパラソル
著者:藤原 伊織
内容:過去を隠して生きるアル中のバーテンダー島村が、新宿中央公園での爆弾事件に巻き込まれ、かつての仲間の死をきっかけに真相を追うハードボイルド小説。
江戸川乱歩賞と直木賞をW受賞した名作です

パラソルでパラシュート
著者:一穂 ミチ
内容:29歳の受付嬢・美雨が芸人・亨との出会いをきっかけに、シェアハウスで芸人たちと交流しながら自分の人生と向き合っていく物語。
笑いと温かさに包まれながら、過去の痛みや将来への不安を乗り越え、自由に生きる力を見つけていく。

いつかパラソルの下で
著者:森 絵都
内容:厳格な父の死をきっかけに、3兄妹が父の不倫疑惑と過去を探る旅に出る物語。
父の生い立ちや「暗い血」の伝説を知ることで、家族それぞれが自分自身と向き合い、少しずつ変化していく姿を描いた、温かくも切ないヒューマンドラマです。
空を飛ぶパラソル
著者:夢野 久作
内容:新聞記者の「私」がスクープ欲に駆られ、女性の自殺を黙って見届けて記事にするが、報道が真実を歪め、人々を不幸にしてしまう様を描く。
報道の倫理と人間の良心を問う、夢野久作らしい社会派短編です