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流行 その始まりから広がっていく仕組みについて

傘にも流行はあります

世の中には流行り廃りが常にあります。
見るもの、着るもの、食べもの、など何でもブームや流行となりますが、傘も昔からみるといろいろな流行がありました。
傘の歴史的な推移や流行については以下の記事にまとめています。

今から4000年前のエジプトで使われた日傘から中国、ヨーロッパでの沿革、日本に伝わった後の素材や技術の推移など、傘もいろいろな進化や流行がありました。
傘に限らず「流行」というものがどのように発生し、広がっていき、最後は収束していくのか気になりませんか?
流行の仕組みについて知ることで「このブームは今こんな状況なのかな」という見方ができるようになるかと思い、まとめてみました。

流行発生とは?

ファッションや食べもの、プレイスポット、歌や映画などさまざまなものが流行り、廃れていきます。
みなさんも今までにいろいろな流行を体験してきたと思いますが、そのようなブームや流行、トレンドとはどのように作られていくのかご存じでしょうか。
今回は流行の仕組みについて詳しく知るために、流行現象に着目した様々な理論を紹介していこうと思います。

流行現象の特質

流行現象は、社会集団内で一定期間にわたり多数の人々が特定の行動や思考様式を採用することによって生じる社会現象です。
これは、美的関心の一般性、服飾における世論形成、時宜に適すること、継続性と時限性、ファッション・サイクル、拘束性、変化テンポの加速性、ファッションの飽和度、規模感、螺旋的進行、欲求不満の補償作用、社会的文化的な背景ンの反映、基本スタイルのアレンジ、など、多岐にわたる特質を持っています。
特にファッションにおいては、これらの特質が顕著に表れ、流行の展開過程は潜在期、初発期、急騰期、停滞期、衰退期という段階を経て進行します。
流行はまた、その時々の社会的・文化的背景を反映し、新奇性や一時性を特徴としています。
これらの特質を理解することは、マーケティング戦略や商品開発において重要な意味を持ちます。

ファッションの流行の特長

ファッションの流行は、特定の時期や場所で多くの人々に受け入れられ、広範囲に波及する「開放的流行」として分類されます。
流行の展開過程は、潜在期、初発期、急騰期、停滞期、衰退期の五段階に分けられ、特にファッションにおいてはこの流行現象型が顕著です。
流行の特長としては、新しいスタイルや概念が社会集団の多数に受け入れられる過程で、社会心理的な強制力が働き、急激に既存のファッションに取って代わることが挙げられます。
また、流行商品のシンボリックな価値が重視され、時代の文化の象徴として機能することも特徴的です。
流行は計画的に生み出されることが多く、メディアやマーケティングの力によって形成されることが指摘されています。
これらの知見は、ファッションの流行を理解し、予測する上で重要な要素となります。

流行のタイプ

ファッションの流行とは、時代ごとに服装スタイルやメイク、ヘアスタイルが流行り廃りを繰り返す現象です。
流行過程の分類による3つの型を紹介します。

1.一般型

普及の初期段階では、新しいスタイルが急速に広まります。
このスタイルが一般的になりつつあるにも関わらず、人々がそれを捨てることは少なく、ある程度の普及水準が維持されます。
さらに、緩やかな普及が続く場合、そのスタイルが一般的なものとして確立される可能性もあります。
この「一般型」は、潜在的な需要が急速に高まり、停滞期に入るとそのトレンドが終息する特徴があります。
具体的な例としては、1960年代に日本で流行したTシャツがあります。
これは一時の流行に留まらず、現代においても広く愛用されています。
最近の事例では、スマートフォンや防寒機能を備えたウェア(ダウンジャケット)などが、流行から一般的なものになったと言えます。

2.衰退型

社会全体からみると、急激な普及に続いて急速な衰退が起こる様式。
典型的な流行で、発端から消滅までの期間は通常2~3ヶ月、長くて2~3年と言われます。
「衰退型」の流行は、潜在的な需要が急速に高まり、急騰期の間が非常に短く、衰退期に入ると急速な下降が始まり、最終的には完全に消えてしまうことがあります。
具体的な例としては、1980年代後半に広まったボディーコンシャスファッション(ボディコン)が挙げられます。

3.循環型

ほぼ同一の様式が、ある程度周期的に広まりと衰退を繰り返す様式。
「循環型」の例として、流行色や現在の流行の一つでもあり、60年代や70年代のファッション〇〇レトロなどのリバイバル現象が挙げられます。
スカートの丈やメイク、ネクタイの幅、ゲーム、漫画など、同じ流行や似たような流行が、時を経て何度もくり返されるパターンです。

流行の段階

どんな流行現象にも、それぞれ発生から衰退までの展開過程があります。
流行現象を五段階に区分する見方があります。

(1)潜在期

あるスタイルが初めて生まれる段階で、それはごくわずかな人々によって試みられます。
この時期は非常に計画的で、潜在的な需要があるとしても、自然に起こる流行とは異なる特徴があります。
例えば、商業的な計画のもとにファッションが生み出され、宣伝の圧力の下で広まる流行では、ファッションショーなどで新作が紹介されます。
近年では、SNSを利用して情報が発信されることも一般的です。

(2)初発期

新しいスタイルが試みられ、その存在が多くの人に知られ、徐々に同調者が現れる段階を指します。
この時期は普及が比較的遅いとされています。

(3)急騰期

新しい様式に対する抵抗や警戒が前期までにある程度薄れ、同時に採用者の数が増えると、相互に影響し合う連鎖反応が急速に広がり、普及率が急激に増加し(5)す。

(4)停滞期

普及が一定の水準に達し、その伸びが鈍化する時期を指します。
一般型の流行では、この段階に達すると流行が終わり、そのスタイルが一定の状態で維持されます。
衰退型の場合は、これまでの広がりが緩やかになり、しばらくの間、ある水準で状態が維持されることもあります。

(5)衰退期

一度採用した様式を廃棄する人数が、新たに採用する人数を上回る時期を指します。
衰退型の流行では、この段階に入ると衰退が急速で、一度広まった様式が迅速に完全に消滅することがよくあります。

流行採用者の種類

これまでは流行自体をテーマにしていましたが、ここでは流行の進展に関与している個々の流行採用者についてみていきます。
流行採用者の個別の時間的な違い(新しもの好き、保守的など)を理解するために、E.M.ロジャースの採用者カテゴリーを取り上げます。

採用者カテゴリーは、新しいアイディアやイノベーションが社会に広まる過程での個人の行動傾向を分類したものです。
以下に、ロジャースによる5つの採用者カテゴリーについて説明します。

1. イノベーター (Innovators)

特徴: イノベーターは新しいアイディアや製品に対して非常に開かれ、冒険的な姿勢を持っています。
彼らは変化や革新に対して早くから積極的な姿勢を示し、リスクを冒して新しいものを試すことが好きです。
全体の2.5%程度がイノベーターに分類されます。

2. アーリーアダプター (Early Adopters)

特徴: アーリーアダプターはイノベーターの後に新しいアイディアを受け入れる傾向があります。
彼らは比較的早い段階で新しいものに興味を持ち、その影響を受けて採用します。
アーリーアダプターは社会の中でリーダーシップの役割を果たすことがあり、全体の13.5%程度がこのカテゴリーに分類されます。

3. アーリーマジョリティ (Early Majority)

特徴: アーリーマジョリティは新しいアイディアが一般的に受け入れられる段階で採用します。
彼らはアーリーアダプターがアイディアを評価し、利点が明らかになるのを見てから受け入れる傾向があります。
全体の34%程度がアーリーマジョリティに分類されます。

4. レイトマジョリティ (Late Majority)

特徴: レイトマジョリティはアイディアが既に一般的になってから受け入れます。
彼らは安定感や社会的な圧力によって新しいアイディアを受け入れる傾向があり、アーリーマジョリティの後に続きます。
全体の34%程度がレイトマジョリティに分類されます。

5. ラガード (Laggards)

特徴: ラガードは変化に対して非常に抵抗的であり、新しいアイディアをなかなか受け入れません。
彼らは旧来のやり方や伝統を好み、変化には慎重な姿勢を取ります。全体の16%程度がラガードに分類されます。

これらのカテゴリーは、イノベーションの拡散プロセスにおいて異なる段階で行動する人々を示しており、イノベーションの普及における時間的なパターンを理解するのに役立ちます。

流行採用の動機の種類

ファッションにおける流行採用の動機は多岐にわたります。
一般的に、個人が流行を取り入れる理由は、社会的同調、個性の表現、自己の価値感の向上などが挙げられます。
例えば、同調欲求は、他者との一体感を求め、社会的な受容を得るために流行を採用する動機です。
一方で、差異化欲求は、自己の独自性を際立たせるために、流行を取り入れることがあります。
また、新しいものへの好奇心や、自己実現の追求も流行採用の重要な動機となり得ます。
これらの動機は、個人の価値観や社会的環境、文化的背景によって異なり、ファッションを通じて自己表現を行う手段として機能します。

流行の理論

ボトムアップ理論

概要: この理論では、流行が個々の消費者や一般の人々から生まれ、広がっていくと考えられます。
つまり、大衆や一般の需要が中心となり、それが市場や文化に影響を与えて流行が生じるとされています。

特徴: イノベーションやアイディアが個人や小さなグループから生まれ、それが広がっていくプロセスを重視しています。

滴下(トリクルダウン)理論

概要: この理論では、上位階層が最初にあるスタイルや文化を採用し、それが下位階層に滴下していくと考えられます。
上位階層が新しいものを導入し、それが広まっていく構造が特徴的です。

特徴: 社会の上位階層が文化やスタイルの嚆矢となり、それが下位階層に影響を与えるという流れを強調しています。

水平理論

概要: この理論では、特定の階層やグループ内での影響が強調されます。
オピニオン・リーダーが同じ階層内の他の人に影響を与え、情報が水平方向に広がるとされています。

特徴: 影響力のある人物やグループが同じ階層内で情報を共有し、それが拡散していくというアプローチです。

限界質量モデル

概要: このモデルでは、ある社会的現象が流行するためには、一定の人口比率(質量)が必要であると考えられます。
特定の質量を超えると流行が発生しやすくなります。

特徴: 社会的影響の強さが重要であり、質量が限界値を超えると急速な広がりが生じるとされています。

まとめ

流行に関するいくつかの説を紹介しました。
いずれの説にもなるほどといえる部分があったのではないでしょうか。
世界的には人口は増加していますが、日本国内は人口が減少しています。
そして人々の嗜好も細分化したため共通する志向の集団が小さくなり、一昔前のように社会全体でのムーブメントというのはあまり発生していないように思われます。
それなりの大きさの流行集団が並行して発生し、規模があまり大きくないためマジョリティに当たる数も少なく集団全体で飽きてゆく時間がゆっくりと経過しているような気もします。

傘については、服ほど流行の変化を感じませんが、その時その時の売れ筋商品というものは存在します。
売れ筋と思われる商品が、その後流行へと進んでいくのかどうか、上記のいろいろな説を参考にして、今後考えてみたいと思います。

傘全集としては、流行を追うのではないトラディッショナルなスタイルの中にアクセントとして現代風な要素を入れるような傘づくりを目指しています。