傘を取り巻く環境

ビニールの傘袋について考えてみた

ビニールの傘袋について考えてみた

2020年7月1日からプラスチック製買物袋(レジ袋)の有料化が全国で開始されました。この時からエコバッグを持ち歩くようになった方も多くいるのではないでしょうか。
目的としては、 海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの解決に向けた第一歩として、「プラスチック製買物袋の有料化を通じて、マイバッグの持参など、消費者のライフスタイルの変革を促すこと」といわれています。一説には、従前より8割以上削減したとのことですが、一方で、エコバッグを「50回から150回使うと、ようやくエコ」と言えるといわれています。その理由は、エコバッグはレジ袋の50倍から150倍の温室効果ガスを排出してしまうからとのこと。

レジ袋有料化はレジ袋削減だけのことではなく、目的とされたライフスタイルとして無駄なことを無くす意識は高まっていると思います。
その意識からみると、雨の日に店頭に置いてあるビニールの傘袋はいかがなものだろう、という気持ちになります。
雨の入ったビニールの傘袋の山はどうなるのだろうかという、モヤモヤした気持ちをもとにビニールの傘袋について調べてみました。

ビニールの傘袋とはどういうモノ

材料は以下の2種類が主なものです。

高密度ポリエチレン(半透明)HDPE
低密度ポリエチレン(透明)LDPE

いずれもプラスチックの1種です。海外でつくられて輸入しているものがほとんどです。

大きさは、縦7700~750mm × 横100~120mmになります。
昭和50年代頃に広まっていったようです。

どのくらい使われているの?

現在、ビニールの傘袋はどのくらい使用されているか試算してみました。

公共施設や学校などいろいろなところに設置されていますが、人数を試算することができそうなスーパーマーケットを対象にしました。
日本全国のスーパーマーケットの店舗数は22,990店舗(統計・データでみるスーパーマーケット 「スーパーマーケット店舗数」2023年6月)あります。

スーパーマーケットの来客数はどのくらいかというと、売り場面積によって来客数は異なります。
ある調査によれば、平日における1日の平均来客数は次のとおりです。
(統計・データでみるスーパーマーケット 「1日の平均来客数」)。
1 日の平均客数は、平日では 1,835.2 人、土日祝では 2,101.4 人
単純に計算すると22,990店舗 × 平日1835.2人=42,191,248人になります。

ではこの4,200万人が雨の日に傘袋を利用するとしたらどうなるか?
雨の日にこの4,200万人の半分が傘を差してくると仮定し、さらに傘を差した半分が傘袋を利用すると仮定します。雨が降ったら客足は減ると思いますが、平日のスーパーマーケットという日常的に行く場所なので、雨が降ってもスーパーマーケットに行くと仮定します。

日本の年間降水日数は約125日といわれています。これは1日中で1mm以上の雨が降った日です。1mm以上の雨で半数の人が傘を差し、2mm以上で全員が傘を差すといわれています。
また、降水確率0%とは、降水確率が5%未満のことであり、雨が降らないわけではありません。
また降雨を観測する予報区は結構広い(東京の場合は5区分)ため降ってない地区もあります。
買い物時間を1時間程度とすれば、降水した日と記録される日でも傘を使用しないでスーパーマーケットに行くことは十分考えられます。そこで傘を差してスーパーマーケットへ行く人数を求めるために以下のように仮説を立ててみました。

・スーパーの営業時間を12時間とすると、年間降水日数125日のうち12時間/24時間である62.5日が対象になります。

・さらに営業時間12時間のうち、実際に買い物をしている時間を1時間とすると、年間降水日数62.5日のうち1時間/12時間である5.21日が対象になります。

・また1mmの雨の場合、傘をさす人の割合は50%ですので、1日の平均来客人数のうち50%である2,100万人が傘をさします。さらにその50%の人が傘用ビニール袋を使用します。

すると約1,050万人 × 5.21日=約5,471万枚。←1年間に日本で使用されるビニールの傘袋

カサ用ビニール袋のコスト(目安)
* 傘用ビニール購入単価 → 2円/枚で算出
5,471万枚 × 2円=1億942万円

雨傘用ビニール袋は、再利用出来ず短期間でゴミになります。1枚利用しないことで4.82gCo2を削減することができます。

Co2排出量の試算(目安)
高密度ポリエチレン(半透明)1枚1g

二酸化炭素削減量 = ビニール傘袋の二酸化炭素排出量 =1 ×(1.63 + 0.033 + 0.016 + 3.14) = 4.82g-Co2

●算出の際の使用値
○レジ袋(HDPE)の「原料採取~輸入~石油精製~原料製造~樹脂製造~製品製造」における二酸化炭素排出量:1.63kg-Co2/kg
※「樹脂加工におけるインベントリデータ調査報告書<更新版>」2011年3月、(社)プラスチック処理促進協会
○材料・製品の輸送:0.033kg - Co2/kg(仮定値:輸送距離 100km。トラック輸送(4t車・積載率 50%)の原単位である0.325kg-Co2/tkmを使用)
○廃棄物の輸送:0.016kg- CO2/kg(仮定値:輸送距離 50km。トラック輸送(4t車・積載率 50%) の原単位である0.325kg - Co2/tkmを使用)
※上記いずれも、「カーボンフットプリント制度試行事業用 Co2換算量共通原単位データベース(暫定版)ver.3.0」
○PEの焼却:3.14kg - Co2/kg
※「プラスチック製容器包装再商品化手法に関する環境負荷等の検討」平成19年6月、(財)日本容器包装リサイクル協会

1年間では、カサ袋使用者数1,050万人 × Co2排出量4.82g × 年間降水日5.21日=年間Co2排出量263,678,100g = 約264トンのCo2を削減できます。

また、ビニールの傘袋を1枚使用しないことにより以下を削減できます。

・天然資源削減量(原油換算)= 1.1ml
原油換算:ビニールの傘袋の重量1g × 46.2MJ/kg ÷ 38.2GJ/kl = 1.2ml
・廃棄物発生削減量 = 1g
ビニールの傘袋の重量 = 1g
・最終処分削減量 = 0.05g
廃棄物発生削減量 × プラスチック類の灰分 = 0.92g × 0.0557 = 0.05g

参考:環境省 廃棄物・リサイクル対策部 企画課循環型社会推進室「3R 原単位の算出方法」より
https://www.env.go.jp/press/files/jp/19747.pdf

お店サイドの考えと対策案

傘袋を使用する店舗側の理由を考えてみました
床が滑って客がケガするのを防ぐため
店内の美観・清潔を保つため
水滴のついた傘に人や商品が触れて濡れないように
こまめに床を拭く余裕(人的、コスト的)がない
環境を配慮した解決策を考えてみました
他の人が使用したビニールの傘袋を再利用する
傘に撥水スプレーをかけて撥水度合いを高め、簡単に水が切れるようにする
傘についた水滴を取る装置やマイハンカチでふき取る
マイ傘袋を持つようにする
水があっても滑らない床にする
エコタイプ(繰り返し使うことができる)傘袋にする
傘袋をレジ袋と同じ有料化にすることで、マイ傘袋を浸透させる
まとめ

ビニールの傘袋について調べてみました。
買い物のときのレジ袋は有料なのに傘袋は無料でしかも1回使ったら廃棄しかない(レジ袋はゴミ袋などに再利用されていたにもかかわらず)という、モヤモヤした気持ちはあまり変わりませんが、お店側の事情も分かります。
そこで、できるところから始めるという意味では「他の人が使用した傘袋を再利用する」のが、一番簡単ではないでしょうか。
他の人が使用したといっても袋の内側が雨で濡れているだけですので、雨に濡れた傘を入れることに何ら問題はありません。雨が止んだら廃棄されてしまうモノですので、雨の間はしっかりと使い切ってあげて廃棄量を減らせたらエコですね。
単に「面倒だから」という理由でなにも対処せずに店内に水滴を持ち込むのはやめたほうが良いですね。

温暖化など環境問題についてまとめた記事「傘におけるSDGs」もご覧ください。