傘を取り巻く環境

傘におけるSDGs

今、世界には皆で取り組むべきさまざまな課題があります。温暖化などの気候・環境問題や貧困などの格差問題、テロや戦争などの安全に対する問題、などに対して地球上の一人一人が身近なところからどうすればいいか考えていく必要があります。
国や企業がどのように将来に向けて問題を解決していくか、を考えるときの指針としてSDGsがあります。
SDGsとという言葉自体はよく耳にしているかと思いますが、傘に関わる者としてSDGsに対してどのようなことができるか、考えてみたいと思います。

SDGsの概要

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標のことをいいます。

<SDGsで掲げられている17個の目標>(持続可能な開発目標)

1.貧困

あらゆる場所、あらゆる形態の貧困を終わらせる

2.飢餓

飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養の改善を実現し、持続可能な農業を促進する

3.保健

あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する

4.教育

全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する

5.ジェンダー

ジェンダー平等を達成し、全ての女性及び女児のエンパワーメントを行う

6.水・衛生

全ての人々の水と衛生の利用可能性と、持続可能な管理を確保する

7.エネルギー

全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

8.経済成長と雇用

包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

9.インフラ、産業化、イノベーション

強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

10.不平等

国内及び各国家間の不平等を是正する。

11.接続可能な都市

包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する

12.接続可能な消費と生産

持続可能な消費生産形態を確保する

13.気候変動

気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

14.海洋資源

持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する

15.陸上資源

陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

16.平和

持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する

17.常套手段

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

現在、日本政府が定めている「SDGsアクションプラン2023」というものがあり(2023年現在)、これは2030年までに、その時点で取り組むべき課題として毎年更新し公表されるものです。

People
人間
多様性ある包摂社会の実現とウィズ・コロナの下での取組

女性の活躍の推進、次世代の人への投資、外国人との共生、公衆衛生危機対策、健康保険の強化

Prosperity
繁栄
成長と分配の好循環

地方活性化、海外企業との取組、脱炭素化、デジタル化、インフラ整備

Planet
地球
地球の未来への貢献

脱炭素成長型経済構造への推進、食品ロス

Peace
平和
普遍的価値の遵守

アフリカの取り組みの支援、子どもへの暴力撤廃、司法アクセスの確保

Partnership
パートナーシップ
絆の力を呼び起こす

SDGs、ODAの取組推進

SDGsにおける傘の問題点

SDGsに関連する「傘」の問題点としては、以下の3点が挙げられます。

・安価なビニール傘の大量廃棄:安い価格の傘は素材や構造にコストをかけられないため、故障しやすい。
また故障しても修理に購入費以上かかるため、修理されず廃棄される。
・傘をゴミ処理するときは粗大ごみや不燃ごみ、燃えるゴミ、資源ごみなど自治体ごとに異なるが、ゴミとして廃棄するときの分別のしにくさがある。
・傘の部品は、プラスチックやビニール、金属などが使用されているが、素材別に分別することを想定して作られていない。
・雨の日に店頭に設置されるビニールの傘袋は、ほとんどがその場限りで廃棄されるものであり、他に再利用もできないものである。

SDGsキーワード

SDGsに関連するキーワードを挙げ、その概要を説明します。

プラスチック資源循環促進法

2022年4月1日より義務化されました。

主な措置内容
① プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計
② ワンウェイプラスチック(一度だけ使用した後に廃棄することが想定されるプラスチック製品)使用の合理化
③ プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化

3R

「3R」とは、「Reduce(リデュース)=ごみの発生を減らすこと」、「Reuse(リユース)=くり返し使うこと」、「Recycle(リサイクル)=資源として再生利用すること」の3つのRの総称

◎傘の3R

Rの種類取り組み策・例
リデュース
購入時に包装しない、修理対応で長く使う、シェアリング、マイ傘袋を用意しビニール傘袋を使わない、自然に還る材料を使用する
リユース
不要な傘の再利用(寄付、フリマ)、修理しやすい構造、遺失物傘の有効活用
リサイクル
壊れた傘の再生利用(バッグなどは実施済)、分別しやすい作り、海洋プラスチックから部品形成

サーキュラーエコノミー

従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルから、「できるだけ長く使う」「できるだけ廃棄しないで済むようにする」「できるだけ再生利用する」などの考え方が主流になりつつあり、それが「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」と言われています。

※取り組み策・例
・安物の傘を使い捨てのように使用するのではなく、良い傘を長く使い続ける
・最初から修理しやすい、再生利用しやすい構造とする
・廃ペットボトルの再生生地を使った傘
・傘の自動販売と回収をする装置
・不要な傘を活用して共同の貸し出し傘
・不要傘を有料で引き取る仕組み(空き瓶回収のように)
・使わなくなった傘の下取サービス

フェアトレード

発展途上国との貿易で公正・公平な取引をすることで、発展途上国の人々の生活を助けるための仕組み

※取り組み策・例
・中国、東南アジアの国々などとの取引にあたって公正・公平な貿易をする、傘はフェアトレードの対象品ではないが対象品のテキスタイルに準じて業界として証明を発行する

カーボンニュートラル 脱炭素社会

「CO2排出量の削減」を目標に様々な取り組みが必要になってきます。
(1)再生可能エネルギー・自然エネルギーへの切り替え(火力発電等の化石燃料を使わない)
(2)輸送を可能な限り減らす。(移動にエネルギーを使うため)
(3)自然環境保護・森林再生などのプロジェクトへの資金提供。

※取り組み策・例
・使用する電力の見直し(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス発電など)
・傘輸入の効率化、国内(地元)生産へ回帰
・業界として環境保護などに資金提供
・自然物の素材を将来に向けて用意するため植林や栽培をする

まとめ

SDGsにおいて、傘に関係する問題点としては、

①大量に発生するビニール傘廃棄物の問題、
②プラスチック廃棄物に関する問題、
③製造・貿易の問題、

にまとめることができると思います。

大企業は競合他社に後れを取らないようスピード感をもってSDGsに対応するため変化しています。
大企業の取り組みに対しては、ステークホルダーだけでなく世の中から厳しく見られています。
そう遠くないうちに中小企業にも大企業と同様に取引先や社会、消費者から対応を求められるようになるでしょう。
また、もうすぐ学校でSDGs教育を受けた子供たちが成長し、SDGsが当たり前となる社会がやってきます。傘を扱っている事業者は、雨や日光など自然に関わる製品を扱っていますので、率先してSDGsに取り組む意義があるのではないでしょうか。