傘と文化との関係

【傘のパーツ紹介】ファッショナブルな傘生地 傘の生地の進化

傘生地のデザインは、長年にわたり大きな変化を遂げてきました。
シルクやコットンなどの伝統的な素材から、ポリエステルやナイロンなどの最新の合成繊維まで、傘生地のデザインの進化は、技術の進歩、ファッション トレンドの変化、環境への懸念によって推し進められてきました。

初期の傘生地 天然素材

傘の生地の初期は、シルクと綿が生地の主な素材でした。
これらの天然素材は軽量で通気性があり、傘に最適でした。しかしながら、高価でメンテナンスが難しく、特に耐水性がありませんでした。

傘生地 素材の変化

初めの頃は、傘の生地には軽くて通気性があるシルクや綿が使われていました。傘には適していましたが、高価で手入れが難しく、特に水には弱かったんです。
しかし、繊維産業の進歩によって、耐久性や防水性に優れた合成繊維が開発されました。例えば、ナイロンやポリエステルは軽くて耐水性もあり、すぐに傘の生地の人気素材となりました。
これらの素材はシルクや綿よりも手ごろな価格で作ることができるため、一般の人々にとっても傘が手に入りやすくなったんです。


傘の素材は時代とともに進化してきています。最新の技術やファッションのトレンド、そして環境に対する意識が、この変化を進めています。

変化の要因

近年、傘の素材が環境に与える影響に対する懸念が社会の中で高まっています。
そのため、多くの傘メーカーが、より持続可能な素材を探求し始めています。リサイクルポリエステルやオーガニックコットンなどの環境に優しい素材が、従来の合成繊維の代わりとして広く使用されるようになっています。

傘生地の素材だけでなく、デザインやスタイルにも大きな変化がありました。
シンプルで無地なデザインから、大胆なパターンや明るい色まで、傘の生地はファッションやスタイルの重要な要素となっています。
傘のデザインはますます多様化し、さまざまな好みやスタイルに対応しています。

傘生地のデザインの変化は、技術の進歩、ファッションのトレンドの変化、環境問題など、さまざまな要素によって引き起こされてきました。伝統的な素材から現代的な合成繊維や環境に優しい代替素材まで、傘の生地デザインの進化は、時代の変化や価値観を反映しています。
変化の激しい世界で、傘の生地のデザインがどのように進化し、今後の新たな課題や機会に対応していくかを見るのはとても興味深いところです。

代表的な傘生地の素材

ポリエステル

雨傘に使われる素材について考えると、ポリエステルが最も一般的と言えます。
ポリエステルは、撥水性が高く、鮮やかな色を出すことができるので、傘に適しています。
ただし、欠点としては、色移りしやすいという点です。最近の加工技術の進歩により、色移りのリスクは減っていますが、染色の関係上で完全に色移りしないとは言い切れない点があります。

ナイロン

一方、ナイロンは最近あまり使われていません。昔は製造コストが安かったため、多くの傘でナイロンが使われていました。しかし、近年ではポリエステルとほぼ同じコストになったため、ナイロンの選択理由がなくなりました。
また、ナイロンは生地が収縮しやすく、乾燥した季節(例えば冬)に傘の開閉に問題が生じることがあります。ただし、ポリエステルと比べて染色方法が異なるため、色移りの心配はありません。

T/C

T/C(ポリエステルと綿の混紡素材)は、晴雨兼用傘や日傘などで使われ、綿の風合いを出したい場合に使用されます。ポリエステルと綿を混ぜた素材として、ポリエステル60%〜70%、綿が30%〜40%程度の割合が一般的です。

ポリエチレン

ビニール傘などで使われるポリエチレンは、透明な素材です。かつてはPVC(ポリ塩化ビニル)が使用されていましたが、ダイオキシン問題の影響で使用されなくなり、代わりにポリエチレンが主に使われるようになりました。ポリエチレンの欠点としては、素材が傷つきやすいことや白濁しやすいことがあります。そのほかは、POE(ポリオレフィン・エラストマー)、APO(非晶質ポリオレフィン)、EVA(エチレン・ビニール・アセテート)があります。

上記のように、雨傘の生地の素材にはそれぞれ特徴や利点がありますが、ポリエステルが最も一般的で、耐久性や撥水性に優れた素材です。それぞれの素材の特性を理解して、自分に合った傘を選ぶことが大切です。

傘生地の織り方、色・柄の方法

織り方

タフタ(平織)

傘では最も多く、傘の場合の1インチの織り込み数は200本前後、平織りで作られ、わずかなよこ畝が現れるのが特徴です。
たて糸とよこ糸は十字にクロスされます。タフタはペルシャ語を語源とし、“ねじって織られる”ことを意味します。この生地はバグダッドのアッタビヤの地で12世紀に発祥しました。近年おもにイタリアやフランスで生産されるようになっていますが、1950年代までは日本でも生産されていた生地でした。現在では、生糸タフタの生産はインドやパキスタンに移っています。

ツイル(綾織)

織り込み本数が約250~280本、表面に奥行きや陰影があり、斜めに線が走っているように見えます。通常織物の糸密度を上げて 肉厚の丈夫な生地を作るために用います。綾織は経糸(タテイト)が緯糸(ヌキイト、ヨコイト)2本または3本の上、緯糸1本の下、緯糸2本または3本の上、緯糸1本の下… と繰り返して織られた生地です。
糸が交差する組織点が、斜紋線または綾目と呼ばれる斜めの線に浮き上がります。織組織の性質上、生地の表面はタテ糸の割合が多くなります。
緯糸を2本交差させる場合を「三つ綾」、3本交差させる場合を「四つ綾」と言い、斜線の角度が異なります。「四つ綾」の織物を一般的には「ツイル」と呼んでいます。

サテン(朱子織)

織り込み本数が約340~360本、光沢感、ボリューム感、高級感が出る織り方で、コストが高いです。
通常経糸(タテイト)が多く表に出ていて、美しい光沢が出やすいです。「サテン」は元々、中国で製織された絹織物が発祥で、中国からアラビアを経由してイタリアに渡り「ゼティン」と言われていました。「ゼティン」は19世紀のヨーロッパで人気となり、その後流通の過程で「サテン」になっていったとされています。

色、柄、デザイン

先染め(糸染め)

色を付けた糸を組み合わせて織ります。
糸の中心部までしっかりと染色されているため、深みのある色を出すことができるのが魅力です。

後染め

生地になってから色を付けます。後染めは先染めと反対でコストがあまりかからないため、大量生産することや、1色あたりの生産ロットが少なくてすみます。
①ハンドスクリーンプリント、②オートスクリーンプリント、③インクジェットプリント、の種類があります。

撥水加工について

雨傘の「撥水」加工について説明します。
実は、撥水加工では一般的にフッ素という物質を使います。これによって、傘の表面に水がついた場合に水滴として弾き飛ばす効果が得られるのです。フッ素は、蓮の葉効果※と同じような働きをするため、繊維が水に濡れるのを防いでくれます。
(※蓮の葉は、微細な突起構造と水の表面張力によって、水を水滴化して濡れないようになっています。たくさんの細かい突起が水滴を支えるイメージです)

「撥水」とは、簡単に言えば「生地の表面に水がついても、水を玉状にしてはじくこと」を意味します。ただし、雨に長時間さらされたり、水滴に圧力がかかったりすると、撥水加工だけでは完全に防ぐことはできません。
傘の生地は、糸を使って作られているため、必然的に糸と糸の間に隙間があります。この隙間が通気性をもたらし、生地の柔らかさやしなやかさを生み出していますが、同時に水が裏側に染み出す原因にもなります。目視では織り目や編み目がしっかりと詰まっているように見えても、水滴が形を変えて生地の中に浸透してしまうのです。

生地表面が水滴や水性の汚れをはじくためには、生地が水分子を引き寄せる力を低下させる必要があります。そのために、染色後にフッ素系やシリコン系の加工剤という分子を生地表面に被覆させる加工が行われます。これによって、生地表面には撥水基と呼ばれる細かな突起物がたくさん形成され、水滴をはじかせる効果が得られるのです。
撥水基は目で見ることはできませんが、産毛のように細かく並んでおり、立ち上がっている状態であれば水滴は水の表面張力に負けて玉状になり、滴り落ちます。しかし、汚れが付着したり、生地同士が摩擦を受けたりすると、撥水基が倒れてしまうことで撥水効果が弱まってしまいます。

つまり、撥水加工は傘の表面に水を弾く効果を与えるものですが、完全な防水ではありません。
傘を選ぶ際には撥水性能だけでなく、生地の質や耐久性も考慮する必要があります。
雨の日に傘を使う際には、できるだけ水滴をはじきやすい撥水加工の傘を選ぶことがおすすめです。

防水加工について

防水加工には、主に2つの手法があります。一つはコーティング加工で、もう一つはラミネート加工です。

コーティング加工では、生地の裏面に合成樹脂(アクリル樹脂やウレタン樹脂など)を塗り、生地目を完全に塞いで水の染み出しを防ぎます。織物には織り目が複雑で凹凸がある場合もありますが、この防水加工ではそれらの隙間をきれいに平らにコーティングする作業が行われます。
ラミネート加工では、生地とは別に用意したフィルムを生地面に貼り合わせることで水の染み出しを防ぎます。

これらの手法は、生地面に樹脂を塗り固めるか、あらかじめシート化したものを貼り合わせるかの違いです。
さらに、コーティング加工には乾式コーティングと湿式コーティングの2つの種類があります。

乾式コーティングはより簡便な方法で、樹脂を生地面に塗り、そのまま乾燥させる手法です。
湿式コーティングでは、樹脂(主にウレタン樹脂)を生地面に塗布した後、凝固槽と呼ばれる設備に浸漬し、水洗槽を通した後に乾燥させる手法です。

防水加工はコーティングやラミネートなどの手法によって行われますが、どの方法を選ぶかは様々な要素によって決まります。
防水加工によって傘の生地は雨水から守られますが、耐久性や品質も重要な要素となるため、適切な傘を選ぶことが大切です。
ちなみに傘としての防水性は、JUPA(日本洋傘振興会)の規定では、雨傘が耐水圧250mm以上、晴雨兼用傘が150mm以上とされています。

まとめ

傘の生地は傘のパーツの中で一番目立つ部分です。傘の印象は傘の生地で決まるといえます。そして、傘と服装のコーディネートにおいても生地部分の要素が最も影響力のあるところです。
機能面では雨や日光を防ぐために直接作用するパーツになります。生地の状態によっては、雨がしみこんできたり、紫外線や太陽の熱が生地を超えてやってきてしまいます。

そんな傘パーツにおいて、野球におけるエースピッチャー、サッカーにおけるエースストライカーのような生地についてまとめてみました。これを読んだ後で傘を使うとき、どんな生地が使われているのかちょっと気にしてみてはいかがでしょうか。