傘と文化との関係

傘のあれこれ 植物について

植物の葉っぱを傘にした絵を見たことはありますか?
鳥獣戯画に出てくるカエルやとなりのトトロなど、思い浮かぶものがあるかと思います。
葉っぱを傘代わりにするモチーフはいろいろなところで見られるように、植物と傘は親和性が高いのかもしれません。
実際に傘と関連した名前を持つ植物がいくつかあります。それらを並べてみて、何か共通するところがあるものか、見てみたいと思います。

ヤブレガサ

本州、四国及び九州の山地に自生するキク科の多年草。
早春に細かな綿毛で覆われた、お化けの傘のような新芽が地面から登場することで人気が高いです。
ヤブレガサという名前もこれに由来し、キツネノカラカサ、ウサギノカサ、ヨメノカサ、カラカサグサといった傘にちなんだ別名も多いとのことです。
傘としてはだいぶボロボロになった状態といえるのではないでしょうか。

ヤブレガサモドキ

キク科ヤブレガサ属の植物です。草丈は1~1.2mの多年草です。
下部の葉は楯状につき、円形で、径20~30㎝。掌状に6~8深裂、裂片はしばしば2裂し、縁はわずかに鋸歯があるか全縁です。
ヤブレガサによく似ていますが、ヤブレガサの花が円錐状につく(上部は尖る)のに対し、この花は散房状(逆三角形で上部は平になる)につくという違いがあります。
傘としては、こちらもヤブレガサ同様かなりボロボロになった傘で雨の日には使えそうもないですね。

いわがさ ( 岩傘 )

近畿地方以西から四国、九州そして朝鮮半島、中国に分布しています。
日当たりの良い石灰岩地の岩場などに自生していて、高さは1~1.5mほどになります。
4月から5月ごろ、新しい枝先に散房花序をつけ、白色の小さな花を咲かせます。
名前は、岩場に生えて花序のかたちが傘に見えることからつきました。
岩場にこんもりとしたかわいい花が咲いている様子は、カボチャ型(深張り型)の傘のイメージにピッタリ合っていると思います。

オオカサモチ( 大傘持 )

長い柄の傘をもって貴人のお供をする「傘持ち」からこの名があります。
山地帯から高山帯の草地に生育する大型の多年草で高さ0.5~2 mになります。
茎は無毛で太く中空、真っ直ぐに伸び上方で分枝。葉は1~3回3出羽状複葉で広卵形,小葉は細かく切れ込みます。
茎頂に巨大な複散形花序をつけます。10数個の小散形花序がついていて,小散形花序には小さな白い花が20個以上つきます。
こちらの傘は名前の由来のとおり、かなり立派な傘をイメージさせますね。

タマガサノキ( 玉傘木 )

名前の由来は頭状花の姿からとのことですが、一つ一つの花の形が閉じた傘のようでそれが玉のようになっているからでしょうか?
アカネ科の落葉樹で、本種はアメリカ東部の沼沢地に自生の見られる灌木。樹高は概して1~3m程度ですが、最大では6m程度になることもあります。
葉は長さ7~18cm、幅4~10cm程度の楕円形~たまご型で、縁部は全緑、先端部は尾状に尖り、基部では短い葉柄に連なり枝に互生します。
葉の表面には光沢があります。7~8月頃、枝先に径2~3.5㎝程度の球場花序を出し、白色の筒状小花を多数つけます。各花の花冠は4裂します。花後には、プラタナスの実にも似ているような球状の痩果をつけます。

ツピタンサス( アンブレラツリー )

ツピダンサスはウコギ科シェフレラ属の植物で、アッサムからマレー半島の熱帯アジアが原産の常緑小高木です。
原産地の熱帯アジアで自生しているツピダンサスは、かなり大きいです。学名はシェフレラ・プエクレリと言います。
かつてはツピダンサス属に分類され、旧学名がツピダンサス・カリプトラツスだったことから、現在は一般的にツピダンサスと呼ばれています。
ツピダンサスの葉はやや厚く、大き目の掌状葉で、綺麗な艶のある濃緑色をしているのが特徴です。葉の形が不思議なほど規則的に、丸い放射線状に葉がついて傘の形をしているところからアンブレラ・ツリーと呼ばれています。
別名:インドヤツデ、アンブレラツリー、チュピタンサス

ハナフカノキ 花鱶木( アンブレラ・ツリー )

ハナフカノキは、ウコギ科の常緑樹です。
樹高は10m前後程度に。葉は掌状複葉で枝に互生します。小葉は長楕円形で7~15個程度つきます。葉は濃い緑色で、表面には光沢があります。
4~9月頃、枝先に散形花序を出し、赤色の小花を多数つけます。花柄が放射状に延びることからアンブレラ・ツリーと呼ばれます。また開花時の様子がタコを連想させることから、オクトパス・ツリーとも呼ばれます。

コウヤマキ( 高野槙 )アンブレラパイン

コウヤマキ(学名: Sciadopitys verticillata)は、コウヤマキ科に属する唯一の種で、常緑の針葉樹です。
この樹種はマツに似た球果をつける珍しい木です。過去には世界中に分布していたことが化石からわかっていますが、現在では温暖で雨の多い東アジアの日本と済州島にしか生息していません。特に高野山でよく見られ、その名前の由来となっています。
属名の「Sciadopitys」は「傘松」という意味で、英語では「umbrella pine(アンブレラ パイン)」と呼ばれています。

カサノリ( 海藻 )

カサノリ科の海藻。石灰質で覆われた白色の針状の柄(え)の頂端に緑色の小円盤をつけ、日傘を広げたような体形を呈するのでこの名があります。
全長5cm内外、傘の直径1センチメートルぐらいのものが多く、皿回しの皿と棒を連想させる形態で,何本も叢生します。
暖海性で九州南端から琉球列島に分布し、死サンゴ体片上に群生し、遠浅の砂浜やサンゴ礁内の潮だまり(タイドプール)などで冬から春ないし初夏にかけて繁茂します。

また、カサノリの仲間で一回り小さい「ホソエガサ」があります。
英名「Mermaid’s Wineglass~人魚のワイングラス」の名がついてます。絶滅危惧に指定、全長3cmほどの小型の海藻で傘を開いたような形が特徴的です。

ピクシーズパラソル( クヌギタケ属 )

傘といえばキノコ類は外せないでしょう。こちら和名はまだなさそうです。
オーストラリアやニュージーランドで発見されている、温暖で雨の多い地域にある腐敗した木や湿った木などに生えるそうです。また、長さ1~2cm、厚さ0.1~0.2cmというとても小さいキノコです。以下はイラストですが検索して写真をぜひ見てください。透明感のある幻想的なキノコです。

カラカサタケ(唐傘茸)

ハラタケ科カラカサタケ属の大きなキノコで、世界中に分布しています。夏から秋にかけて、雑木林や公園の草むらなどに生えます。
和名の由来は、傘が開いたときに唐傘が開いたように見えるからとされます。加熱すれば食べられますが、生食は毒です。
常に高さは30cm以上、傘の直径は8~30cmになります。表面の色は淡い褐色、その上に表皮が破れてできた濃褐色の鱗片があります。
カラカサタケは傘が開く前の“つぼみ”(卵型から丸型)のまま柄がどんどん伸びていきます。そしてある一定まで生長して傘が開いた成熟状態になると、唐傘そっくりの形になり、ます。
外観が類似する猛毒種があります。コカラカサタケ、オオシロカラカサタケやドクキツネノカラカサ、ドクカラカサタケです。

まとめ

色々な種類の植物で「傘」の名前がついていましたが、多くは葉や花の形がきれいな丸や円、放射状の形をしており、傘を連想させるところからきているようです。
里芋の葉のように実際に傘に使えそうという意味ではありませんでした。
なかには観葉植物として育てることができるものもありましたので、傘好きの方はこの記事をきっかけに育ててみてはいかがでしょうか。