傘と文化との関係

【傘と建築】伝統と現代の融合:傘が形作る多様な建築デザインの魅力

傘は日光や雨を防ぐものとして古代から世界各地で使われてきました。
その目的は、人が長い時間を過ごす場所を快適にするという意味で建物と共通しているといえます。
そのような建築物の中には「傘」をモチーフとしたものを見ることができます。
今回はそのような建築の一部を紹介します。

から傘の家

傘と名のついた建築物はいろいろありますが、それらの原点といえるような建築です。

「から傘の家」
1961年、東京都
設計者:篠原一男

「から傘の家」の設計者である篠原一男は、日本の代表的な現代建築家である清家清の弟子です。
この家は別名キノコの家とも呼ばれ、正方形の平面形状(7.2m角)を持ち、から傘の骨組みのような方形の屋根が特徴です。
個人用途、団らん、サービスの3つの機能エリアに分かれており、仕切りを開けるとほぼワンルームのようになります。
このデザインは、篠原が古い民家の田の字型プランに見られるようなアイデアを取り入れ、現代的に再解釈したものとのことです。

洋傘構造の家/アンブレラハウス

こちらは家の形そのものよりも構造に傘が取り入れられています。

「洋傘構造の家/アンブレラハウス」
設計:井上尚夫総合計画事務所

「長く住み続けることのできる住宅のかたち」の一つの提案として、野点(のだて:野外でお茶をたてること、野点傘をさしかけ緋毛氈を敷く)のしつらえと民家の田の字型プランから発想。
田の字型の中央に心柱を立てそれによって支えられた洋傘シェルターと柱と梁による軸組構造で、住宅のライフサイクルに合わせてフレキシブルに間取りや空間、家の形が変化することができるようになっています。

井上尚夫総合計画事務所 ホームページ
http://inouearc.in.coocan.jp/nakameguro.htm
参考資料:住宅建築 No.297(1999年12月号)P48~P55

カサ・アンブレラ

傘そのものを材料とした建築プロジェクトがありました。これは組み立て方によってはいろいろなサイズが可能になるのでしょうか?

「カサ・アンブレラ」
隈研吾建築都市設計事務所

Casaはスペイン語やイタリア語で「家」の意味です。カサ・アンブレラは二重の意味で傘の家となります。これは被災者住宅を考えるということからスタートしたプロジェクトです。
傘は、世界で身近に使われており、雨を効率的にしのぐことができ、骨と膜(生地部分)を活用した構造で、傘同士はジッパーで繋げていて、傘の柄もすべて取り外せるようになっているとのことです。
みんなの家にこの組立可能な傘が何本かあり、災害の時に近所で持ち寄って組み立てて簡易避難所にするというのもありなのではないでしょうか。

隈研吾建築都市設計事務所HP https://kkaa.co.jp/project/casa-umbrella/

アルジャジーラ

「何百もの傘を壁側面に設置して太陽光を遮る」という高層ビル
太陽光が直撃するときに傘を開き、それ以外のときは閉じているというすごいビルです。
REXという建築会社のサイトでプロジェクト名「アルジャジーラ」と書かれていますが、実際にあるのでしょうか?

ゲル(パオ)

アウトドアで使うテントやターフなどは、傘と家の中間にあたるようなものといえるのではないでしょうか。実際、折り畳み傘のような要領でワンタッチで設定できる小型テントもいろいろと販売されています。
また、モンゴルのゲル(中国ではパオ)も柳の木を格子にした折りたたみ式の壁と傘の骨のような屋根で骨組みをつくり、羊毛のフェルトで全体をおおい、ひもでくくっている移動式の家です。

傘状のものに対し強度を保ち効果的に組み立てるには、傘の骨のような放射状の仕組みが自然と考えられたのかもしれません。
 

まとめ

傘の特長である開閉できるというところを活かしたものや、安定感やバランスを強く感じる傘状の屋根の建築など傘に関連するさまざまなタイプの建築・住宅がありました。
今回紹介した他にも傘と関係のある建築があると思いますので、ぜひご紹介いただければと思います。