傘と文化との関係

傘の芸 太神楽(だいかぐら)

開いた傘をクルクルと回して、「おめでとうございまーす」、「いつもより多く回しております」といった掛け声をあげる年配の方をどこかで見かけたことはありますか?
以前はお正月のテレビでよく見かけた、傘の上でマスやコマなどいろいろなものをクルクルと回す芸が元ネタです。
この芸は太神楽と言ってかなり昔から行われているものです。
やはり傘マニアとしてはこの辺りも探ってみました。

太神楽の由来

古くから神社を祭る式楽、舞楽(ぶがく)から生まれました。神事芸能として獅子舞は、古くから神社の祭りや舞楽から生まれたもので、伊勢や尾張(熱田)、水戸などがその発祥地と言われています。
江戸時代には、伊勢神宮や熱田神宮の神職である太神楽師が各地の大名に雇われて広まり、獅子舞が家々を祓う風習として行われるようになりました。
獅子舞は疫病や悪霊を払う力があると信じられており、正月や祝いの日に行われます。太神楽の獅子舞では、二人が獅子頭をかぶって舞います。
また、開いた和傘の上で毬や桝を回したり、撥の上に土瓶を乗せたりする曲芸を披露したり、時には歌舞伎のパロディを演じたりもしました。
幕末には寄席が非常に人気の場所となり、新たな芸が求められる中で、太神楽も舞台芸能として寄席に進出するようになりました。

太神楽の構成

太神楽は『舞』『曲芸』『話芸』『鳴り物』の四つの柱から成り立っています。

【舞】 獅子舞・恵比寿大黒舞など
【曲芸】 投げ物(撥・鞠・ナイフ・輪など) 立て物(傘・五階茶碗・皿など)
【話芸】 掛け合い茶番(源三位頼政・祐兼参詣・五段目・鹿島の舞など)
【鳴り物】 下座音楽・祭囃子など

『傘の曲』(傘回し) は、開いた和傘の上で鞠や桝を回したりする芸です。
回すものにも意味があり、何事も丸く治まる「鞠」、金回りがよくなる「金輪(こんりん)」、ますます繁盛の「枡」など、縁起の良い物を使っています。そして傘自体が末広がりの形になっているので、おめでたい場で好まれる芸といえます。

舞台芸としての太神楽は、歴史的に演目にも変化が生じ、例えば昭和の初めころまではよく行われていた茶番や掛け合い噺などは、演じられる機会が少なくなっていきました。
現在の寄席における太神楽は、技を見せる曲芸を中心に行われています。
江戸時代に広まったこの太神楽曲芸は、明治・大正・昭和と時代と共に技芸を発展させて、平成、令和の現在へと受け継がれている伝統芸能となっています。
今でも演芸場の演目のなかに一つは太神楽が入っていますので、一度ライブで体験されてみてはいかがでしょうか。
また、余裕のある方はご自身でもできるように練習をしてみてはいかがでしょうか。Youtubeなどで検索するとやり方が出てきます。一発芸として盛り上がること間違いなしです。