傘を取り巻く環境

傘のアフターメンテナンスや修理をチェック!長く愛用するためのヒント

 

傘はきちんと手入れして使っているときれいな状態のまま長持ちします。しかし、使いっぱなしで手入れをしないでいると残念ながら長く使うことができません。では、どのようにすれば気に入った傘を長く使うことができるのか、確認してみましょう。

傘のお手入れが悪いと起こること

傘の手入れを怠っていたり、間違った手入れをしていたりすると傘が傷んで次のようなさまざまなトラブルが発生してしまいます。

①カビの発生

傘を使って濡れたまま放置しておくと雑菌(モラクセラ菌)が生地部分に繁殖して、においがつくようになります。最悪の場合カビが発生してしまうおそれがあります。
こうなってしまうと、ほとんどの傘は使うことができなくなります。
特に梅雨時はジメジメしてカビが発生しやすいので気をつけましょう。

②撥水効果を下げてしまう

今はほとんどの雨傘に撥水加工がされていますが、この撥水加工も生地に水分がついてしまったままだと効果が弱まってしまいます。
撥水効果を発揮しない傘はますます傷みやすくなるので要注意です。

③ 骨や中棒などの金属部分がさびる

傘の骨や留め具には金属が使われていますが金属(鉄)は水に弱く、水滴がついたままにしておくとサビが発生してしまいます。

その他にも傘の手入れが悪いと型崩れや変色するなど、さまざまなトラブルが起こる可能性がありますので、正しいお手入れ方法を理解しておきましょう。

傘を長く大切に使っていただくためのお手入れ方法

使用後の日常お手入れ方法
水に濡れたまま保管するとはっ水や防水加工の劣化の早まり、骨のサビの原因なります。
特に折りたたみ傘の場合、使った後に良く乾かす前に傘袋に収納して、その後も乾かさずにそのままという場合があるかもしれません。

レベル1(一番簡単、これだけはやろうレベル)

① 使用後は十分に雨水を切り、
② 風通しの良い所で傘を広げて陰干しし、十分に乾かしてから保管してください。

※水を切るときは、下に向けて静かに開閉を繰り返してください。

間違った水切り

×傘全体をふって 水を切る
×傘をトントンと地面にあてて水を切る
これらは、傘のハンドルやシャフト部分に大きな負荷をあたえ、累積したストレスで割れたり折れたり曲がったり傘全体のバランスを崩す原因となります。

×開いたままクルクル回す
傘の中心にある中棒に負荷がかかって傷めてしまいます。

×傘を閉じてからクルクルっとまわして水を切る
上下のろくろや親骨・受骨のジョイントの部位に大きな負荷をあたえて、天頂から雨水が入り込んで中棒をつたう症状がでたり骨が損傷する恐れがあります。

保管の時のポイント

直射日光の当たる場所や高温多湿な場所、蛍光灯の光は生地の変色や劣化につながり、撥水効果の低下とともに骨にもダメージを与えます。直射日光が当たらない風通しの良い場所で陰干し、保管してください。
理想は「早めに陰干し」。できれば使ったらすぐ開いて干して下さい。しかし干せる環境が準備できないということもあるかもしれません。そんなときは使用直後に水分をよく払い、金属部を乾いたタオルで拭いて簡易的な手入れをしておき、後ほど眠るときに朝までずっと開いておきます。
その際、ろくろ側(石突がある側)を下にしないこと。ちょうど漏斗(ろうと)のような形状になるので、中に残っていた水が骨づたいに上ろくろに集まってしまいサビの要因になります。

レベル2(安心長持ちレベル)

①水洗い:広げてシャワー等で傘の表面の汚れを洗い流します。
②レベル1(水切り+陰干し)を行います。

雨には空気中のほこりや排気ガスなど不純物が沢山含まれています。これが生地に残ることで色が変わってしまう可能性があります。また、傘を巻く際に付着する手脂(皮脂)やハンドクリームなどが生地表面に付いてしまうことで撥水効果は弱まっていきます。そこで使用後の水洗いを実行してみてください。かなり効果があります。

レベル3(安心長持ち+撥水キープレベル)

① 熱処理:レベル2(水洗い+水切り+陰干し)実施後、十分に乾いたら、ドライヤーの温風で傘生地全体を温めてください。

※ドライヤーは傘の表面から2~5cmほど離してください。一か所に長く当てると生地が傷むのでご注意ください。端から中心まで片道5秒位のスピードでかけていくようにします。真ん中の折り目付近はゆっくり念入りに熱を当てると、きれいに折り目がつきます。

傘の生地の表裏では異なった加工がされています。ザックリというと表が撥水、裏が耐水(防水)のコーティング加工ですが、傘生地は仕上げ行程で裏側からアイロンをすることを前提(遮光傘などは例外)としていますので、裏から熱をあてることには殆ど支障がありません。

※ビニール傘に熱を与えると変性・破損が生じるので、このようなお手入れはしないでください。

撥水加工に使用されているフッ素樹脂は、水を弾く性質があります。傘の生地にはこのフッ素樹脂の粒が縦に細かく並べてられていることで、雨に濡れても生地に水分が染み込まないようになっています。
しかし生地の汚れ、摩擦や何度も水が当たることで、フッ素樹脂の粒が倒れて並びが乱れてしまい、撥水機能が低下してしまいます。そこで、ドライヤーの温風をあてると、倒れてしまったフッ素樹脂加工の組織が元のように立ち上がり、水を弾く効果が復活できるようになります。

※長く使い込まれた傘は、撥水性能の機能が失われているものもあります。そのような傘は熱を与えても元のように撥水性能を取り戻せないのでご注意ください。

傘巻き

傘を長持ちさせるという意味で「巻き方」も「お手入れ」の一貫としてとらえて下さい。
生地の大敵は擦れ、手垢、手の脂(皮脂)です。

傘生地の表面は、蓮の葉状(ロータス効果)になっており、突起が沢山出ているような状態です。これによって雨がころころ転がって水をはじいています。ところが生地が擦れたり手の垢や脂が付着することで目詰まりを起こし、突起も倒れて寝てしまい、雨が転がらず貼り付いてしまいます。
この症状は主にコマ(傘の生地の一部分、三角の形)の折り山付近で起こりますが、これは巻くたびにここを手で擦るからなのです。濡れて汚れた生地を、濡れて汚れた手で擦り付ければ、生地に必ず手垢がついていきます。そこで、巻くときに生地に触れないように巻いてみましょう。

生地を極力触らず擦らない巻き方のコツ

傘を閉じたら片手で露先を束ねるネーム紐を向こう側からまわし、傘を少し斜めに倒しながらネームを引き上げる
1.傘を閉じたら
2.片手で露先を束ねる(ネーム紐や玉留めのあるものは纏める)
3.ネーム紐を向こう側からまわし
4.傘を少し斜めに倒しながらネームを引き上げる
5.ネーム紐は軽く引き上げている程度で、強くは引っ張らない。傘本体を徐々に倒しながら、ゆっくり回すことで生地を束ねていく
6.時々ネーム紐の引っ張り具合に強弱をつけて、生地をほぐして整える
7.最後だけはネームをしっかり引っ張り、ボタンをとめる
※折りたたみ傘はタイプにもよりますが、主に生地の裏側にふれることになりますので、ここまで気をつかう必要はありません

中間部が若干膨らむこともありますが、生地には殆ど触れないことで、手垢や油分による撥水効果の減少が解消されます。

外出時はこの要領で纏めていただき、最終的に家で片づけるときは、乾かした生地を、綺麗な手できれいにたたんで傘立てに保管しますが、この時にはビシッとシワを伸ばして同じ方向に向けてたたむようにしましょう。
適当にたたむと生地にシワがついてしまいます。

保管の際は出来るだけ暗所で保管してください。日光やライトを長時間浴びると生地が変色する場合があります。

汚れたときや晴雨兼用傘の洗い方

雨の日にも晴れの日にも活躍してくれる晴雨兼用傘は、意外にも雨やほこりなどの汚れがついています。長く綺麗なまま大切に使うためにも、半年に1回程度は晴雨兼用傘のお手入れを試してみてください。雨傘も汚れが目立つときは同じようにしてみましょう。

手順

1. ほこりを落として薄めた洗剤を用意する
2. 傘の内側と外側を洗剤液で水洗いして全体をすすぐ
3. タオルでふいて日陰で広げて干す
4. 撥水スプレーをする

1. ほこりを落として薄めた洗剤を用意する

使った後の傘には意外にもほこりやゴミが付着しています。まずは洗濯用のブラシや歯ブラシなどで優しく払ってあげてください。その後、洗面器にぬるま湯を張り、中性洗剤を薄めて準備しておきます。

※黒など濃い色の日傘を洗う際は色落ちの可能性があるので、蛍光剤の入っている洗剤を使うのは避けてください。

2. 傘の内側と外側を洗剤液で水洗いして全体をすすぐ

スポンジに洗剤液を染み込ませ、傘を内側から軽く叩くようにして汚れを落とします。同様に外側の汚れも落としていき、洗い終えたら優しく全体をすすぎます。

※晴雨兼用傘は撥水加工がしてあるので、加工が取れないように柔らかいスポンジで優しくポンポンと落とすことがポイント。

3. タオルでふいて日陰で広げて干す

乾いたタオルで優しくふき、陰干しします。傘の骨の錆を防ぐためにも傘の内側や骨の部分も丁寧に拭き取ってくださいね。

4. 撥水スプレーをする

使ったり洗ったりするうちに撥水効果が薄れてきてしまうこともあるので、撥水スプレーをしておくと汚れも防げて安心です。撥水スプレーが完全に乾いてからたたみましょう。

※撥水スプレーの説明をよく読んで、お手入れしたい傘に使えるか確認してください。

また晴雨兼用傘には、水洗いできるものと、洗えないものがあります。遮熱・遮光傘に多いポリウレタンコーティング(PUコーティング、光沢感がありツルツルしている)の傘は洗えないので、タグでしっかり確認してくださいね。

ポリウレタンコーティングの傘については、全体のチリやホコリを払い、しっかり絞ったタオルなどで、傘の内側と外側を優しくふきます。汚れやすい部分などは、水洗いする場合と同様に行ってみてください。

傘のシミ抜きをしたい場合は?

最近は白い雨傘や日傘が、爽やかかつレフ版効果を期待できるという理由で人気です。
しかし、黒色の傘に比べてシミがつきやすく目立ちやすいというデメリットがあります。
もしお気に入りの白い傘にシミが付いてしまった場合、対処法として最短かつ間違えがないのはクリーニングに出す方法です。
クリーニングのプロがきれいに洗ってくれますので、新品同様の傘によみがえるでしょう。

また、自分でシミ抜きをすることもできます。
ガーゼに洗剤を染み込ませて、シミがついてしまった部分の後ろから白い布を当てて叩くとシミが消える可能性が高いです。

何度か叩いていけばシミは薄くなりますが、あまり叩きすぎると生地が傷んでしまうので加減してシミ抜きをしましょう。
これでも効果が感じられなければ、酸素系の漂白剤を使って白くシミ抜きすることをおすすめします。

シミのようなサビがついてしまった場合はお酢を使うと効果的です。
傘の素材がナイロンやビニールであれば、メラミンスポンジを使用すると汚れが落としやすくなります。

最後に

傘もローテーションが大事
野球のピッチャーや靴とおなじで、複数の傘をローテーションしたほうがそれぞれの傘が長持ちします。
特に雨が続く時期は、乾く間もなくヘビーローテーションで使い続けると、傘に大きな負担をかけ寿命を縮めます。
一本を休ませているあいだに、別の傘が使えるようコンビネーションとすることで、それぞれを永く使い続けることができます。
長傘と折りたたみ傘などご自身の目的や用途に合わせて複数本の傘を持つようにしましょう。