傘を解析する

【傘のパーツ紹介】傘で一番長く触れている部分  傘の手元の素材について

傘の手元は、柄(え)、ハンドル、持ち手、取っ手、など様々な呼び方があります。
傘のパーツの中でも生地の柄(がら)に次いで目立つ部分であり、直接長い時間触れる部分でもあります。そんな手元にはたくさんのバリエーションがあります。
手元(持ち手)の素材についてみると、主にプラスチック・自然木・金属・皮革に分かれます。
これら素材面からそれぞれの特徴を紹介します。

プラスチック

アクリル・ポリスチレン…etc

プラスチックは加工がしやすく塗装も一度で済みます。
また軽量な手元(持ち手)になる場合が多いのも特徴です。
素材によってそれぞれ長所と短所があります。

ポリプロピレン(PP)は、安価で丈夫ですが、艶なしプラスチックなので、高級感がありません。
ポリスチレン(PS)は、光沢が出せますが、割れやすいです。
ABS樹脂は、厚みがあると割れにくいですが、重く、ある程度厚みがないと割れやすいです。
アクリル樹脂は、透明感が出せますが、割れやすいです。
プラスチックの製法・特徴

プラスチック射出成型品(ABS樹脂 不透明、アクリル樹脂 透明)
色彩や表面処理(塗装やメッキ)等に汎用性が高く、大ロット製造に対応できます。使用可能な金型さえあれば製造コストが安価である一方で、冷たく硬い感触は冬の雨のときは如何ともし難いです。

プラスチック手作り(アクリル樹脂)
例えば透明感のある斑入りの手元をつくろうとした場合、射出成型では難しいです。デザインを具現化したアクリルの板材を作り、その材料から切削、曲げ、研磨加工等で1本ずつ手作りします。高コストではありますがデザイン性の高いハンドルができます。

楓(かえで、メープル)・樫(かし)・ 籐(とう)・エゴ・クルミ、栗の木、マラッカなど

今も昔も木製のハンドルは本格傘の好きな方に人気があります。
自然木は木の持つ自然な風合いやしっとりと手になじむ手触りが魅力です。なにより一番のメリットは見た目の美しさです。
塗装は木に染み込ませるために4~5回必要となり手間がかかっています。
一方、材木板を積み重ねた合板を使用したハンドルは、安価で加工もしやすいですが、安っぽく見えることがあります。

木の製法・特徴

自然木
それぞれの幹、枝、茎、蔓などをそのままの状態で曲げ、塗装、仕上げ加工をします。一つとして同じものはなく、長く使うことで手になじみ所有する喜びを感じられるはずです。カスターニャ、マラッカ、バンブー、チェリー、コンゴなどがラインナップされます。

木(製材加工)
製材した板材を乾燥し、切削、曲げ、研磨、塗装の各工程を経て、ほぼ同型のハンドルを量産できます。使用する木の種類としては、楓が圧倒的に多いのですが、木目が特徴的なアカシアやアッシュなども選択可能です。

合板
近年、木材の高騰により木製ハンドルの値上がりが続き、その需要が減少しています。そこをカバーしているのが合板材です。残念ながら強度の問題で、折りたたみ傘やミニ傘の寸胴タイプには使用できませんが、長傘は合板、折りたたみやミニ傘は楓という組み合わせは浸透しているといえます。

竹製ハンドル(Whangheeワンギー 根竹、寒竹)

竹製のハンドル竹の根を加工したものです。
木製に近い手触りを持ちながら、より軽量になります。
木よりも乾きが早い点も傘には適しています。竹製ハンドルは高級な傘に多く使われており近年人気が高いです。

金属

真鍮(しんちゅう)・亜鉛合金・アルミ軽合金など

金属は独特の質感やスタイリッシュ感を演出できます。
シャープな印象がある、かっこいいハンドルです。
空洞タイプであれば重さも気になりません。
腐食を防止するためビニールでラッピングされることが多いです。
ツヤツヤしすぎているとチープに見えますが、表面がマットに加工されていれば上品な印象になります。
以下の写真のように加工の手間がかかることもあるためか、金属製のハンドルは、最近かなり少なくなったように思います。

革製

合皮…皮に似せた素材

塩化ビニルとポリウレタン素材で芯を巻いたもの。中芯=木・プラスチック…etc
合皮は自由なデザインが可能で、耐水性に優れているのが特徴です。手触りの優しさ、発色の美しさ、持ち心地の良さで人気の高いハンドルです。一方、永年の使用にあたっては経年劣化による表面剥がれが出る場合があります。

皮の製法・特徴

合成皮革の場合は主にポリウレタンの合成皮革シートを抜き型で裁断し、芯木に巻いて仕上げます。多配色展開に対応しやすく柔らかい温かい感触が特徴です。

本革…牛革など

基本的にハンドル部分も雨に濡れることが想定されるため、特に本革を使用したハンドルの場合はこまめなメンテナンスが大切になります。

こまめなメンテナンスで風合いを長く保てます。また、種類によっては経年変化を味わうことも可能です。

持った時に大切な重さの感覚、素材による比重の違いは?

比重一覧

基 材

種 類

略 称

比重(g/㎤ )

コンゴ自然物0.41~0.45
アッシュ(タモ)自然物0.51~0.56
エゴノキ自然物0.55~0.63
自然物0.60
チェストナット自然物0.60
自然物0.60~0.65
モチノキ自然物0.64
ナラ自然物0.67
自然物0.69
自然物0.70
ヒッコリー自然物0.70
自然物0.90
ポリプロピレン(PP樹脂)形成品PP0.9~0.91
ポリエチレン形成品PE0.91~0.965
ABS樹脂形成品ABS1.01~1.04
ポリスチレン(スチロール樹脂)形成品PS1.04~1.09
アクリル形成品PMMA1.17~1.20
アルミ軽合金金属2.5~2.8
亜鉛合金金属6.6~6.7
真鍮金属8.45

基本的には軽い方が長く持っていても疲れにくいですが、手元の形や傘全体のバランスなどからも持ちやすさは変わってきます。
実際に広げたり閉じたりした状態で持ってみることをお勧めします。

最後に

傘全体を人間に見立てた場合、手元は傘の顔といわれています。傘の顔はものすごくたくさんの種類があります。
この次に傘を購入する時には、今まで使ったことがないタイプの手元をチョイスしてみてはいかがでしょうか。使うときに新鮮な気持ちが生まれてくるに違いありません。

手元は、傘の中で常に直接触れるパーツになります。永く気に入っていただける一品に出会えるといいですね。