傘を取り巻く環境

傘のプロフェッショナル 洋傘にまつわる資格の深淵

世の中にはたくさんの資格があふれています。
実は数多くある資格の中で洋傘に関係する資格もあるんです。今回は洋傘に関する資格をぜひ知っていただき、街で目にした時には周りに方に伝えてほしいとの思いで紹介します。

アンブレラ・マスター

アンブレラ・マスターとは、日本洋傘振興協議会が認定する洋傘の専門家のことです。
この資格を持つ人は、洋傘の種類や機能や素材や製造技術などに詳しく、お客様に最適な洋傘を提案できます。また、洋傘の正しい使い方や手入れ方法や修理時の対応なども教えてくれます。

アンブレラ・マスターになるには、日本洋傘振興協議会が開催する講習会と認定試験に合格する必要があります。この資格は5年ごとに更新する必要があるので、常に最新の知識を持っていることが求められます。認定された人には、アンブレラ・マスターの称号と認定証が授与されます。また、有料特典として、アンブレラ・マスターのバッジや店頭サインも販売されます。

アンブレラ・マスターの資格を持つ人は、日本洋傘振興協議会から発行されるマークを表示しています。このマークがあると、お客様は安心して洋傘の買い物をすることができます。アンブレラ・マスターは、洋傘の魅力をお客様に伝えるプロフェッショナルです。

日本洋傘振興協議会は、国内の洋傘メーカー約50社が加盟する団体です。この団体は、「JUPA」という品質基準を設けて、高品質な洋傘を作っています。しかし、安い輸入品に押されて、国内の洋傘業界は苦境に立たされています。そこで、アンブレラ・マスター制度を作って、洋傘の魅力を消費者に伝えることで、市場を活性化させようとしています。
日本洋傘振興協議会では、このアンブレラ・マスター認定制度について、ホームページや広報紙、マスコミへの広報活動など、さまざまなプロモーション活動を通じて盛り上げをはかっています。

日本洋傘振興協議会サイト:https://www.jupa.gr.jp/pages/about_masters

東京伝統工芸士

東京都伝統工芸品指定制度とは

東京の伝統工芸品は、東京の歴史や文化を反映した美しい作品です。それぞれの工芸品は、古くから伝わる技術や素材を用いて、手間ひまかけて作られています。
伝統工芸品は、大量生産される商品とは違って、個性や温もりが感じられます。また、実用性や耐久性にも優れており、日常生活に彩りを添えてくれます。
伝統工芸品は、東京の地域産業としても重要な役割を果たしています。地元の職人や企業が技術や知識を継承し、新たな創造性や革新性を加えています。
東京都伝統工芸品の指定制度は、以下の要件を満たす工芸品に対して行われます。この制度は、「東京都伝統工芸品産業振興協議会」の意見を参考にして、知事が指定するものです。

 製造工程の大部分が手工業的であること。
 伝統的な技術または技法により製造されていること。
 伝統的に使用されてきた原材料により製造されること。
 都内において一定の数のものが、その製造を行っていること。

東京都の伝統マーク

このマークは、「東京都指定伝統工芸品」について、都の紋章と伝統工芸の頭文字の「伝」をあしらったもので、検査に合格した製品に貼られています。

東京都伝統工芸士の認定制度

下記の要件を備える者のうちから、「東京都伝統工芸品産業振興協議会」の意見を聴いて、知事が東京都伝統工芸士に認定しています。

 東京都伝統工芸品の製造の実務経験が15年以上あり、現在もその製造に従事していること
 高度の伝統的技術・技法を有していること
 伝統工芸品産業振興事業の推進に協力しており、今後も協力できること。
東京都伝統工芸士会 https://www.dentoukougei.jp/tokyo/

東京都伝統工芸品 東京洋傘について

東京洋傘は、1854年にペリーが浦賀に来た時に日本に伝わった洋傘を、東京の職人たちが独自の技術と心遣いで作り上げたものです。
骨屋、手元屋、生地屋、洋傘職人という分業体制で、均一でバランスのいいフォルムと使い心地の良さを追求しています。雨傘としても日傘としても使えるから、雨の日も晴れの日も楽しめます。東京洋傘は、天気に左右されない魔法のようなアイテムです。

伝統的な技術・技法による傘の作り方

傘を作るのには、伝統的な技術・技法が必要です。
1.まず、三角木型に合わせて生地を裁断します。これをコマと言います。コマに異常がないか検反します。

2.次に、共生地(ともきじ:メインと同じ生地)の上に専用の型を置き、ゲンノウで打ち付けて、天紙(てんがみ:傘の内側天辺の当て布、骨と生地が直接擦れないため)とダボ布を作ります。ダボ布は骨の関節部分に当て布にするためのものです。

3.クロは傘の開閉時にスライドさせる部分で、共生地で包んで縫います。

4.カバーという円状の生地(傘のメインの生地)を作るために、コマを三角形の頂点側から露先まで縫います。この縫い方を関東縫いと言います。

5.天紙をカバーに取り付けて、隙間がないように縫います。カバーの先端に露先を取り付けます。これを口とじと言います。

6.カバーを親骨に縫い付けて固定します。これを中とじと言います。

7.菊座という菊の形のような部品を作って、骨の先端に取り付けます。陣笠も骨の先端に取り付けます。

8.ネームという閉じた傘をまとめるためのバンドを作って、取り付けます。

9.手元は接着剤で中棒と固定します。最後に、検品して傘が完成です。

図:傘のパーツ名


東京都産業労働局 東京の伝統工芸品
https://www.dento-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/items.html

まとめ

洋傘に関係する資格について紹介しました。
アンブレラ・マスターは完成した洋傘を販売する専門家としての資格です。百貨店や専門店などにいて、傘についていろいろな知識を持っているスペシャリストになります。
もう一つの東京都伝統工芸士は、傘をつくる職人に対する資格です。東京洋傘という東京都知事の指定した伝統工芸品を匠の技で作り上げる達人に対して認定されるものです。
ぜひ一度東京都伝統工芸士の作った東京洋傘をアンブレラ・マスターの説明を聞いてみてはいかがでしょうか。納得感のある体験を得ることができると思います。