傘雑話集

性別と傘

性別と傘

現代は男女ともにシンプルなものが好まれてはいるものの、女性の持つ者の方が若干派手ではあります。日本において、一番フォーマルである場は結婚式なのかなと思いますが、参加される男性陣のシンプルで地味な服装に比べて、女性陣の服装はきらびやかである事が多いですよね。

しかし、このことは歴史をさかのぼって考えていくと現在が特異な時代であるという事が分かると思います。というのも、服装が派手であるか地味であるかは階級差によって生ずるものであって、性差によって生ずるものではない時代が長く続いてきたからです。分かりやすく言えば貴族階級は男女ともに派手な格好をしていたが、農民階級は男女ともに地味な格好をしていたということです。

ですから中世ヨーロッパなどでは、性別によってどんな傘を持つかという違いは発生しにくかったと考えられます。

ちなみに、日本においては傘そのものが階級差の象徴であった時代もあり、傘を持つことが許される階級と、笠の使用しか認められていない階級があった(正確にはそうしていた藩があった)ようですが、江戸では傘は珍しいものではなかったようですし女性が男性と同じような傘をさしている浮世絵も多いことから性別による傘の違いはなかったと考えて良さそうです。

さて、このような話の中での傘と言えば英国紳士というキーワードが登場するかと思います。英国紳士が使用する傘はかっこよくはありますが、きわめてシンプルなものであり地味なものです。これに対し、この時代の英国女性は日傘を使用しておりたくさんの刺繍が入ったきわめて派手な日傘を使用していました。実のところこの頃から、女性はきらびやかで男性は抑えるというファッションにおける暗黙の了解が生まれてきたようで、傘の使用にもそのあたりの意識が表れていると思われます。ですから、これ以降、傘は紳士物と婦人物に分けられ、日傘は女性の物という時代が長く続いてきたわけなのです。

もっともこの現象は現代においてはフォーマルな場面においての現象であり、カジュアルな場面においては男女ともにシンプルで地味なものを好むようになっているため、普段使いの傘においても「ユニセックスな無地の物」で良いという風潮が見られます。

このように、時代の移りかわりと共に変化してきた性別と傘との関係でありますが、「一億総○○」と言った用語が過去のものとなり、「二極化」が叫ばれるようになってきた現在の日本において、また性別によって傘が変わってくる時代が来るようになるのかもしれません。今後、どのような傘が主流になっていくのか本当に楽しみです。