傘と文化との関係

“傘の意味と象徴性:言葉に隠された意味” 世界の「傘」という言葉について

傘と文化との関係

傘は古くは4000年前にエジプトやペルシャで使われていました。ヨーロッパや中国でも何千年も昔から使われ、日本をはじめ世界各地に伝えられたことが明らかになっている歴史ある道具です。
そんな昔からある「傘」について、「傘」をさす言葉が各国でどのような言葉であるかまとめてみました。

英語 umbrella

umbrella は、陰(shade)、影(shadow)を意味するラテン語 umbra に由来してます。もともとは日傘として用いられたことが語源となっています。
折り畳み傘は(folding umbrella  telescopic umbrella)

・各部分の名称

全体の「骨組み;枠組」はframe。「骨:親骨」はrib、同じ骨でも傘を[広げるための骨:受骨]はspreader(スプレッダー)、スプレッダーの「かなめになっている輪:下ろくろ」がring、骨に張られている「天蓋:生地」がcanopy(傘体)、骨と天蓋を結合した先端部分「露崎」はtip、そして、「柄:中棒」はshank。握る部分「手元」はhandle、傘を開く際の「つまみ:はじき」がtabです。ちなみに、傘をたたむときにたばねることをtie closure、柄の先端はbulletです。

英語 parasol

イタリア語で「守る」という意味の「parare」と太陽を意味する「sole」が結びついたもの
イタリア語において、「太陽から守る」意をもつ語パラソーレ(parasole)が、日除けの用具としての傘の呼称として用いられました。

中国語 伞

現代中国語では、日本語と同様、総称として「傘」(簡体中文:「伞」、ピン音:sǎn)
元々は傘ではなく、「繖」という漢字が使われていたとのことです。使われていたのは後漢(25年~220年)までということですから、今かおよそ1800年以上も前になります。 「糸」を編んだ布製の傘が、降ってくる雨を「散」らしていることを表しているそうです。 ちなみに音読みは「散」と同じ「サン」で、今の読み方は旧字に由来があります。後漢に続く六朝時代(229年~589年)に、俗字として「傘」が使われるようになったと伝えられています。
「傘」は見るからに傘と分かる象形文字です。「人」の部分は雨が伝っている様子を表している説や傘の骨を表している説、人が傘の下に集まる様子を表している説、などがあります。

韓国語

朝鮮語では日本語の訓読みに相当する習慣がなく、漢字語はあくまで漢音で発音するため、日本語の音読みと同様に中国語発音に倣って、「傘」の総称は「산(サン)」、降水対応の傘は「우산(ウサン、「雨傘」の朝鮮語音読)です。

フランス語 ombrelle  parapluie

現代フランス語では、オンブレル(ombrelle)は婦人用の小さい日傘を、パラプリュイ(parapluie)は文字通り雨を防ぐものである雨傘を指す用語として明確に区分されており、晴雨兼用の傘は別途オン・トゥ・カ(en-tout-cas)と呼称されています。parasolは、ビーチで使う大きなパラソルのことを指します。

イタリア語 ombrello

フランス語と近く、雨傘はombrello  日傘はparasole、ombrello da sole
ビーチパラソルはombrellone  婦人用の小傘はombrellino となります。
折りたたみ傘はombrello pieghe̱vole   オートマチック傘はombrello ad apertura automa̱tica

スペイン語 paraguas

Paraは動詞のparar(パラル)から来ており「止める」、agua(アワ)は「水」という意味で、合わせて「水を止める」になります。日傘はparasolでparar(止める)+sol(太陽)

ドイツ語 Regen schirm

Regenは雨、schirmは傘、 日傘、 落下傘、 (キノコ・クラゲなどの)傘、(ランプの)シェード窓、傘状のもの

オランダ語 paraplu

para(パラ)には「~から保護する」という意味がありplu プル は雨を意味するフランス語の pluieが語源となっていて雨から保護する→ paraplu =傘となります。

トルコ語 シェムシイェ şemsiye

語源はアラビア語の[شمسيةシャムスィーヤ]で、もともと「日傘」の意味ですが、「雨傘」の意味でも使われています。

チェコ語 デシュトニーク deštník

「雨降り」は、Déšť (デェシィㇳ)、「雨が降っている」はPrší  (プㇽシィー)

その他

ハンガリー語 エシェルニュー esernyő
ポーランド語 パラソル parasol
ヒンディー語 チャトリー छतरी
モンゴル語 シュヘル SHUKHER
タミル語 コダ குடை
リトアニア語 スケーティス skėtis

言葉の由来をみてみると、日を避ける日傘からきたものと雨を避ける雨傘からきたものがありましたが、言葉の生まれた地域でもともとどのように傘が使われてきたのか垣間見えます。
傘という言葉から派生したところとして、傘の形状に似ているところからキノコの上部やランプのシェードなども傘といわれたり、傘の目的から後ろ盾や守ってくれることを意味するとして「権力を傘に・・・」や「傘下」といった使われ方もあります。日頃何気なく使っている「傘」という言葉ですが、その背景を知ることで別の見え方ができるかもしれないですね。
今後海外に行かれる際には「傘」の現地語を覚えておくと、急な雨降りで困った時などにスムーズに使えるのではないでしょうか。