傘を解析する

美肌を守る秘密!日傘の驚くべき効果とは?

春から夏に向けて日差しが強くなってくると日傘を使う機会が増えてきます。もともと傘は古代の時代には権力者に対する日傘として使われていました。そのため雨傘よりも日傘の方が古くから使われている歴史があります。
そんな日傘を使うと、直射日光を遮ることで ①熱中症を防ぐ、②紫外線を防ぐ、③まぶしさを防ぐ、といった効果があります。
それら日傘の効果について改めて確認することで、どのような機能のある日傘が自分に向いているか、整理することができるのではないでしょうか。

【効果その1】熱中症を防ぐ

日傘の遮熱性がどのくらいあるかについては以下の論文が参考になります。

日傘による遮熱環境緩和効果の実証的研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/56/4/56_133/_pdf
日傘の日射遮断率は日射量によらずほぼ一定。最も日射遮断率が多い日傘は「ラミネート白」。日射量が増加するに従い日傘の長波長放射増加率(長波長:赤外線など)が増加、黒色日傘の方が白色日傘より長波長放射増加率が大きい。UTCI(体感温度指数の一つ、気温・相対湿度・風速・平均放射温度により測定)低減効果が最大の日傘は「ラミネート白」であった。

日傘による暑熱緩和効果の解明
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-25350085/25350085seika.pdf
日傘の温熱効果を明らかにするため実験を行った結果、夏季の屋外において日傘を使うことにより遮熱感覚が改善され、全身の体感温度が1~2℃低下し、頭部の体感温度が4~9℃低減した。

暑熱環境下における個人の適応策としての日傘の効果評価に関する研究
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390294330152622080
日傘による熱ストレス低減効果を明らかにすることを目的として,人工気象室ならびに実環境下における温熱環境や人体生理反応に関する被験者実験を行った。帽子を着用した場合との比較として実施した実験結果から,人工気象室実験では日傘による発汗量低減や皮膚温度上昇抑制の効果が確認できた。一方で,実環境下ではこれらに顕著な差は見られなかったが,人体熱収支解析の結果から,日傘使用時の放射環境改善に伴う放射受熱の大幅な低減による蓄熱量の低減効果を確認できた。

都市街区における日傘と帽子の熱ストレス緩和効果
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390854717706816896
実際の日本の都市街路において、日傘、帽子、街路樹、ドライミストによる緩和効果を相互比較した。この相互比較のために、the universal thermal climate index(UTCI)が観測された。その結果、街路樹、日傘、帽子、ドライミストの順に暑熱緩和の効果が大きいことが分かった。日傘によるUTCIの低減効果は5.3℃だった。これはUTCIのストレスカテゴリが"Very strong heat stress" から "Strong heat stress"への低減を意味する。また、日傘による緩和効果は、街路樹による効果の約70%に匹敵した。

日傘生地の色および加工の違いによる暑熱緩和効果の比較
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhesp/45/0/45_49/_article/-char/ja
日傘生地の色および加工の違いが暑熱緩和効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。傘(銀)、日傘(白)、日傘(銀)、日傘(白+遮熱ネット)の4種の傘下および比較のため日向の熱環境を測定した。その結果、白色日傘は日射遮蔽効果が最も大きく、生地温度の上昇による下向きの熱放射量の増加が最も小さいことが示された。テニスコートにおいて、UTCI低減効果が最も大きかったのは日傘(白+ネット)の-3.6℃であり、次いで日傘(白)の-3.0℃、日傘(銀)の-2.6℃、傘(銀)の-1.4℃であった。この結果から、傘の表面が銀色より白色の方が暑熱緩和効果が大きいことが示された。

傘をさしているときの周りの環境(風や照り返しなど)にもよりますので、一概には言えませんが、生地にラミネートやコーティングなどの遮熱加工処理をした遮熱効果のある白色の傘を選ぶと効果があると思われます。遮熱効果については、遮熱率や遮熱指数といった評価基準があり、日本洋傘振興協議会では指数35クリアーを基準として専用のマークを設定しています。

日本洋傘振興協議会HPより https://jupa.gr.jp/pages/jupa_syanetusyakoumark

【効果その2】紫外線を防ぐ

一時の真っ黒な日焼けブームが忘却の彼方にある今、紫外線の防止は当たり前のように世の中に認識されています。なぜ紫外線の防止が必要なのか改めて確認してみましょう。

紫外線が人の健康に与える影響として以下があるといわれています。

急性:日焼け、紫外線角膜炎(雪目)、免疫機能低下
慢性:しわ(菱状皮膚)、シミ、良性腫瘍、前がん症、皮膚がん、白内障、翼状片

一方、私たちの体にとって、紫外線とビタミンDは深い関係にあります。
ビタミンDの主な働きは、腸からのカルシウムの吸収を2~5倍程度に増加させることです。ビタミンDが不足すると、食事でカルシウムを摂っていても十分吸収されず、カルシウム不足になります。血液中のカルシウム濃度が低下すると、けいれんなどの症状が起こるため、骨からカルシウムを溶かしだして供給するようになります。その結果、骨の強度が低下して曲がりやすくなり、くる病(主に成長期の子ども)や骨軟化症(成人)といった病気を起こすようになります。

ビタミンDは食物としては、きのこ類や脂身の魚類に多く含まれていますが、その他の食品には少ししか含まれておらず、必要量を食事だけから摂るのは困難です。そのため、多くの人は必要ビタミンDの半分以上を日光紫外線を浴びたりサプリを飲むなどしてカバーしているのが現状です。適切な日光浴(15分から20分程度)が良いといわれています。

日傘の紫外線防止について以下の論文が参考になります。

日傘による直達日射の人体投射面積遮蔽率
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhesj/21/2/21_KJ00009595428/_pdf/-char/ja
日傘による人体投射面積の遮断率は太陽高度が高くなるにしたがって大きくなった。同じ太陽高度でも太陽に対する被験者の回転角や日傘の持ち方によって値が異なった。

人体に照射される紫外線の防御評価法の開発
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-16K00799/16K00799seika.pdf
紫外線の遮蔽効果を詳細に評価するため、都市空間において実測に基づき6方向のPFを算出し、横方向から側面に照射する紫外線を評価に含めることの重要性を明らかにした。さらにマネキンによる実測から「衣服+アームカバー+日傘」の組み合わせが最もUV遮断効果が高く、UV遮断率は最大で60.3%であった。

マネキン型紫外線測定器による眼部紫外線被曝の測定と眼部UVインデックスの提唱
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-21592249/21592249seika.pdf
眼部への紫外線被曝に関する研究。紫外線防御アイテムに関し、サングラス〉眼鏡〉帽子〉日傘の順に効果が高いが、形状、色の影響が大きく、UVI(紫外線指数)及び太陽高度により効果が異なる。日傘は効果が少なく、眼部の紫外線カット率は約20~40%程度である。白い日傘は日傘内面からの反射が強く眼部被爆量は増える。内面の色は紫外線を吸収する黒が有効である。

気象庁HPによると、紫外線の反射(照り返し)について以下のように書かれています。

「地表面での紫外線の反射の割合は、草地やアスファルトの反射率は10%もしくはそれ以下ですが、砂浜では25%、新雪では80%にも達します。さらに、地表面で反射された紫外線の一部は上空に向かい、大気等で再び散乱されて地上に向かいます。つまり地表面の反射率が大きいところでは、反射率が小さいところより散乱光も強くなっています。例えば、南極のように一面雪原の場合には、上空からの紫外線量(UVインデックス)は、反射と散乱の効果により雪がないと仮定した場合と比較して4~5割ほど増加することが分かっています。
上空からの紫外線に対して帽子や日傘の利用は有効ですが、地表面から反射してくる紫外線についても忘れずに、総合的な紫外線対策をとることが大事です。」

日傘の紫外線の防止について「UV(紫外線)カット率」という基準があります。
UVカット率は目に見えない紫外線をカットする能力の数値で可視光線をカットする能力とは違います。また、UVカット機能だけの日傘には、遮光の機能が無いため、可視光線や赤外線はカットしてくれません。

地上に届く太陽光の分類と割合

太陽光を100%としたとき
紫外線6% 可視光線52% 赤外線42%

適切な日光浴を考慮しつつ、地面からの照り返しや大気中の散乱も相当量ある中で紫外線の遮断量をコントロールすることは難しいと思います。
体質の許す方はあまり神経質になりすぎず、UVカット機能のある日傘を活用しつつ、状況に合わせて日焼け止めやサングラス、アームカバーや羽織るものを一緒に活用したらいかがでしょうか。

【効果その3】まぶしさを防ぐ

部屋のカーテンにおける「遮光カーテン」や窓ガラスに張る「遮光シール」、農業用の「遮光ネット」など、いろいろな場面で「遮光」が求められています。それら、まぶしさを防ぐものには、生地の可視光線の通過度を測る基準である遮光率が参考になります。
しかしながら、今のインターネット上には、日傘の機能の説明において「完全遮光」、「遮光率100%」、「遮光率99.99%」、「1級遮光」など様々な表現があるため、なにがどうだかわかりにくくなっているのではないでしょうか。

「一級遮光」とは日本洋傘振興協議会(JUPA)が定めた基準で、日本工業規格(JIS規格)試験によって遮光性が99.99%以上と証明された「生地」のことです。
日傘の中には、「完全遮光」「遮光率100%」をうたっている物もありますが、JUPAの基準にはなく各社が独自にうたっているものになります。
本来、針と糸で縫製されている日傘について完全遮光を保証するのは難しいため、過大広告にあたる恐れがあるといわれています。

まとめ

日傘を買うときは、「熱中症予防には、遮熱加工」:「紫外線予防には、UVカット加工」:「まぶしさ予防には、遮光加工」、を基準に選んでください。

熱中症を予防するには白色・ラミネート系の日傘が効果が高いです。

まぶしさを防ぐ遮光率は生地の基準であり、99.99%と100%の違いは傘製品となっては縫製などによりわずかな隙間ができるなど個体ごとに計測できないため0.01%の部分での比較は無用です。

紫外線防止について、日傘の内側は黒が有効です。ただし、地表面の反射や空気中の散乱を考慮すると日傘だけでは効果が限定されますので、日焼け止めやサングラス、アームカバーの併用が有効です。

日傘に限らずどの商品に対してもそうですが、過剰な説明に踊らされない、見る目のある賢い消費者として納得のいく物を使っていきましょう。