新技術、新素材開発に関して大きく分けて2つの流れがあると思います。
一つは従来技術、素材の中から新しい組み合わせを発見して、その技術、素材で製品を開発していくもの、もう一つは完全に新規の技術、素材が開発されその技術、素材で製品を開発するものです。もちろん新規の技術は常に過去の技術の土台の上に成り立ってはいますが、組み合わせから出てくるものと、新たな発想では少し意味合いが違うわけです。
そして一般的に新たな発想を模索している人が生物を研究している時に新しい技術、素材が開発される流れになる事が多いです。反対に、単体の生物を研究していく素材開発に関しては、従来の技術や素材の組み合わせから新しい生物由来の素材が出来たという事には中々なりにくいようです。
このあたりの事は結果を見た場合の話でしかないのですが、技術的に車輪と軸を持った生物はいないように、組み合わせの生物というものがほぼ存在しないからなのかも知れません。異素材の組み合わせで出来た生物(元素は当然組み合わさっているわけだが)、つまり爪だけが鉄のカニなども存在しないわけで、生物が別素材で構成されるというのは考えにくいです。人間の爪などは一見すると皮膚とは別素材にしか見えませんが、爪も皮膚もタンパク質から作られているわけで明らかな異素材というわけではないのです。
さて、概念的な話は置いておきまして、傘は主に、生地、骨、手元と分けられるわけですが、これらは一般的に異素材で作られています。そして、それぞれの部材では色々と生物由来の部品が存在していました。例えば傘骨はもともとクジラのひげを使用していましたし、手元は今でも竹を曲げたものを使用していたりします。傘生地に関しては古くからのものではありませんが、蓮の葉の研究から出てきた水をはじく生地、塗膜が生物由来と言えそうです。
傘はシンプルに水をはじく、紫外線に強いなど生物が外界から身を守るというコンセプトと一致することが多いため、実際に使用されてる部材は生物由来の事が良くあります。折り畳み傘の骨だって、考えようによっては人間の腕の骨と筋肉をモデル化した動きだと考えてもおかしくはありません。一部スライド傘の中棒の6角形も基本的にはハニカム構造だと思われます。やはり、いろいろな生物がもととなっていますね。
また、傘に使用されそうな生物由来の素材としては、蜘蛛の糸のような構造を研究されていくタンパク質系や、ミドリムシから作られるプラスチックなどのようなカーボン系が主力となっていきそうです。何年かかるかは分かりませんが、数年前にはコンセプトが出ていたのでそろそろ完成する頃なのではないかなと期待しています。