普段何気なく使っている折りたたみ傘のはじまりについて、1928年にドイツのハンス・ハウプト氏によって発明され、1932年に特許が取得されました。その特許を基にして、Knirps社(クニルプス社)が製造と販売を始めました。
この時代の前後には、日本国内でも折りたたみ傘の開発に関するさまざまな動きがありました。そして、昭和40年代中ごろには、日本は折りたたみ傘の世界有数の輸出国となりました。
そんな日本の折りたたみ傘の歴史を紹介します。
折りたたみ傘について その歴史や種類を調べてみた
あなたの折りたたみ傘はどのタイプ?
日本の折りたたみ傘の歴史(背景となるヨーロッパの動きも含め)
1715年 パリ生れのマリウスなる人物が折りたたみ傘を作り、絵入りポスターで宣伝したといわれる。
1820年(文政3年) この頃から、1850年(嘉永3年)頃にかけて、イギリス・イタリア・ドイツなどでスチール製の傘骨が開発される。
文政年間(1818~1843)から文久年間(1861~1863)にかけて、少量だが傘が日本に輸入されている。
1850年(嘉永3年) イタリアのカザールがスチール製の骨で、軽く開きやすい傘を考案。
1852年(嘉永5年) イギリスのサミエル・フォックスがU字型の傘溝骨を発明。
1865年(慶応元年) 安政年間(1854~1859)から慶応年間(1865~1867)にかけて、横浜の外国商人が自国から傘を輸入して販売するようになった。
1868年(明治元年) オランダ・イギリスから傘5,000円が輸入されている
1871年(明治4年) 英・ロンドンにピアレス社設立。折りたたみ傘の販売で伸びる。
1872年(明治5年) 傘の輸入、41,000円に急伸 ※明治初期の傘の価値→米1俵分相当
輸入はこの年がピークで、次第に国内での傘生産が興隆。明治13年頃から輸出も行われる
1877年(明治10年) 高橋常吉、大鏡善三、小原藤七の三名が三盛社を興し、東京・本所で洋傘骨の生産を始める。
1880年(明治13年) 洋傘が発売された千盆丹の広告用に採択され、売薬行商人によって全国に広まる。
1884年(明治17年) 東京・本所石原町で粕谷、大鋸、泉などが横浜の外国商社から材料を仕入れ、バネ骨や桜骨の製造を始める。
※フォックス骨の総輸入元は横浜のアイザック商会で伊勢甚(国内用)、大沢商会(外人用)等が仕入れていた。
1889年(明治22年) 大阪の坂上幸三郎、桂一三郎が「懐中蝙蝠傘」を発明。「普通傘を三つに編メ・・・・」とあり、引締傘(折りたたみ傘の前身)の初期と思われる・・・・?
1890年頃、河野寅吉は輸入された飛上傘(現ジャンプ傘の先祖)、引締傘(現折りたたみ傘の前身)を模倣製造して好評を得る。
大阪市北区の浦岡松次郎出願の「蝙蝠傘骨(折りたたみ式)」に特許(第810号)
1892年(明治25年) 愛知県の小畠幾次郎出願「蝙蝠傘(折りたたみ式)」に特許(第1574号)
1929年(昭和4年) 高木商会が英マンニング社製の折りたたみ傘発売。
1934年(昭和9年) 伊勢丹で二段式折りたたみ傘発売
1947年(昭和22年) 白田忠三郎が折りたたみ洋傘骨の実用新案権取得。
※戦後、西村、荒瀬(東京)門倉(大宮)等が折りたたみ傘を試作研究、また藤野益太郎(東京)、白田忠三郎(大宮)等も折りたたみ傘の将来性に目をつけ、22年頃から生産に乗り出している。
1949年(昭和24年)頃 ごく一部の業者により折りたたみ骨の開発、ドイツ製の折りたたみ骨をモデルとして真鍮の異形パイプを使って大小のパイプがスライドして短くなる中棒が開発使用され商品化となる。
1950年(昭和25年) 折りたたみ傘が旅行携帯用として流行。ドイツ製や従来の日本製を改良したもの
1951年(昭和26年)頃 親骨に溝地金が使われホック式に改良され、現在の形式になる。それを契機に急速な需要の増加が起こり折骨業者は大増産を図る
1954年(昭和29年) 丸定商事(アイデアル)によってスプリング式の折りたたみ骨が完成。そのころ生地としてナイロンが発売され、その後この二つのセットで折りたたみ傘の全盛時代を迎える。
1960年(昭和35年) ポリエステル国産化によりナイロン洋傘、テトロン洋傘として合成繊維への変遷が起こる。
1963年(昭和38年)頃 十数年続いた折りたたみ傘も画一的になりすぎて頭打ちとなる。植木等の「なんである、アイデアル」のCMが放送される。
1965年(昭和40年) コンパクト傘(二段式中棒を三段式、ハンドルは付けない小型)発売、人気商品となる。ミニ傘(三段折)も市販される。軽い材料の開発として、従来の真鍮中棒と鉄の先骨にアルミ合金を使用するものを開発
1967年(昭和42年) ジャンプ式折りたたみ傘、自動開閉式折りたたみ傘、トップレス式傘(ミニ傘)開発される。
1980年(昭和55年)トップレス式ミニ傘の流行始まる
最近(2023年)は、耐風、撥水、丈夫さ、軽量化、畳みやすさ、などいろいろな機能面が進化しています。また晴雨兼用傘も増えてきており、遮光性、遮熱性も取り入れられています。
折りたたみ傘の出荷数の推移
経済産業省 工業統計調査より作成
出荷数量のグラフでは、国内向けに長傘より折り畳み傘が多かった時期は昭和39年から昭和44年までの間でした。
その後は長傘の方が国内出荷数は多く、折りたたみ傘は減少傾向が続きました。
一方、輸出向けは昭和45年以降折りたたみ傘の方が多くなっています。
ただし、折りたたみ傘、長傘とも昭和45年頃より輸出は減少し続けています。
折りたたみ傘の種類・構造
二段式
傘骨の中央が折れ曲がる構造で、たたんだときは開いていた時の内側の部分(ぬれていない部分)が表側にきます。
折りたたみ傘の中では強度はありますが、折りたたむ時に布部分を綺麗にたたむのが難しいです。
三ツ折り
傘骨の部分が二箇所折れ曲がる構造で、二ツ折りと同じで、たたんだときは開いていた時の内側の部分(ぬれていない部分)が表側にきます。
折りたたみ時に小型にすることが出来るという利点から、クニルプスブランドやコボルドブランドなどの携帯用の小型折りたたみみ傘に良く使われています。
構造上、二ツ折りよりも強度は弱く、折りたたみ時のやりにくさも二ツ折りと同じです。
特に親骨が3段以上に折れて、中棒が3本以上で伸縮し、一般的な折りたたみ傘よりも折りたたんだ時の寸法が小さくなるタイプのモノを『ミニ傘』って呼んでいます。
また、親骨が上ろくろではなくて、受骨に直結して、開くと上部がフラットな状態になるモノを『トップレス傘』って呼んでいます。
三ツ折り開閉型
三ツ折りタイプと同じで、傘骨部分が二箇所折れ曲がる構造なのですが、たたんだ時に開いていた表側(ぬれている外側面)がそのまま表側にきます。
折りたたむと布が自然に収まる手軽な機能になっているのが特徴になっています。
たたんだ後にぬれている表側が外側になるので、専用の袋などに入れないと収納しにくいです。
フォックスアンブレラズの折りたたみ傘に採用されています。
フォックスアンブレラズ公式サイトhttps://www.foxumbrellas.com/collections/telescopic
折りたたみ傘と長傘、どちらを持ってる?
折りたたみ傘と長傘、どちらを持っているか調べている調査がありました。
やはり、電車やバスによる通勤・通学の割合が多い首都圏では折りたたみ傘を持っている割合が高いということです。ファッションアイテムとしての長傘の存在感よりも折りたたみ傘の効率性を重視している人が多いということでしょうか。
https://weathernews.jp/s/topics/202205/200205/・長い傘率は女性で高く、男性の1.6倍
・多雨エリアでは長い傘の割合高く、6割以上に
・通勤手段との相関が良好
地方で車で移動することが多い場合は、傘を使っても車内にそのまま置いていちいち折りたたむことはしないため、長傘を使用する人が多いようです。
まとめ
日本でも折りたたみ傘については明治時代から開発を続けてきて、現在に至っています。
それぞれの時代の流行を取り入れながら骨や生地など構造として進化をしてきました。
いまは折りたたみ傘もいろいろな種類がありますので、色や柄だけでなく各種機能やサイズについてご自身の目的に合った傘が見つかると思います。
また、自身のライフスタイルに合ったタイプの傘を使用することが快適に過ごすポイントです。
気に入った傘は大切に長く使いますので、安物のビニール傘のようにすぐにゴミになったりしないため、環境にもやさしくなります。
気候変動(温暖化)の影響かわかりませんが、局地的大雨や集中豪雨などが以前に比べて増加傾向にあります。急な雨にも困らないようにお気に入りの折りたたみ傘を常に持って出かけると安心です。
さらには長傘と折りたたみ傘の両方を用意しておくと、降水確率や雨量の違いにも幅広く対応できるのではないでしょうか。
洋傘タイムス Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E考察~傘の歴史
https://www.kasaya.com/times/14-04.htm
東京洋傘産業史 発行:昭和54年 東京都洋傘ショール商工協同組合 編