傘を取り巻く環境

洋傘産業  生産・販売の仕組み

日本の洋傘産業 150年

明治初期に日本で初めて洋傘が生産されてから現在まで約150年が経過しました。その間、日本の国も近代化の中でいろいろな出来事がありましたが、洋傘産業としても山あり谷あり様々なことがありました。
洋傘はナイロンやポリエステル、綿などの繊維、鉄やアルミニウムなどの金属、竹や木などの天然素材、プラスチックやカーボンなどの成形品など様々な素材が元となり作られています。普段何気なく使っている傘がどのように作られて皆さんの手元に届くのか紹介したいと思います。

洋傘製造業について

洋傘製造業者はもともと毛布類、メリヤス製品等、外国から渡来した商品を扱っていた者が多く、一般に舶来模造品商ともいわれました。また傘自体の商品性として季節性が高いため、閑散期に対応する方法としてショールやマフラーなどの商品を兼業することで通年の事業を構成した企業が多くありました。
洋傘の主要部品は、洋傘骨、生地、手元、その他付属品からなりますが、これら部品の製造は分業化されており、そのことが洋傘製造業界の特長となっています。
製造卸業者は、各部品メーカーから半製品を仕入れ、アセンブル(組立・加工)し、完成品とします。

洋傘製造業界関連図

洋傘は、季節商品としての性格が強く、その需要は天候に著しく左右されます。特に春から梅雨期、夏にかけての需要が最も盛んで、生産は1~6月が繁忙期、7~12月が閑散期となるため、兼業者は7月以降、他部門に注力することになります。需要量は天候要因(年間降雨量)に左右されますが、近年は日傘や晴雨兼用傘の需要増により緩和されつつあります。

洋傘の縫製組立工程

洋傘骨、生地、手元等の部品は各分業メーカーによって製造されます。製造卸業者は傘下の下請け又は委託先である分業メーカーから各部品を仕入れ、最終製品として組立て・加工します。このため、製造卸業者の生産工程は裁断・縫製が中心であり、分業メーカーも含めて、その生産形態は労働集約性が高い業種となります。
また、主な設備は縫製機(各種特殊ミシン、洋傘用専用ミシンを含む)のみで、一部に熱裁断機、プレス裁断機、整反機等を設置している工場もあります。

洋傘の生産・組み立て工程

1970年代頃から国内の製造品と海外からの輸入品を比較し、低価格等を理由として国内製造品の競争力が低下してきました。そのため国内業者は製造拠点を人件費等の安い台湾や中国へ移転する動きが大きくなってきました。国内生産は少数生産で付加価値の高い製品のみ残り、大量生産により価格面で競争力をつける製品は海外で製造し、日本国内からはデザインや製造管理を行う形態へと変化してきました。
上記の縫製組立工程にしても、付加価値の高い高級洋傘については国内で各工程を行っていますが、価格面で競争力を高める製品の場合は、デザイン以外は海外で行い、完成品を日本へ輸出しています。

現代洋傘の傾向

洋傘は生活必需品ですが、一方でファッションアイテムでもあります。そのため安価な輸入傘に対抗する方法として、ファッション性の向上や機能の高度化により差別化を図っています。
ファッション性の向上については、ブランドとのタイアップや洋傘職人による丁寧な作り、デザインの多様化などの流れがあります。
機能の高度化については、グラスファイバーやカーボンの活用による軽量化、撥水効果やUVカット効果、すぐたためる形状記憶の生地などが開発されています。

洋傘の販売経路

販売は製造卸業者や問屋から百貨店、コンビニやホームセンターなどの量販店、衣料品や生活雑貨などの専門店等を経由して消費者に販売されています。
特に業界大手は主に百貨店を主要ルートとしています。また製造業者も小売部門を持っているところは自社製品をそこで販売しています。

また、最近の消費者は実店舗ではなくインターネットを通じて洋傘業者の自社ECサイトやアマゾンや楽天などの大手ECモールから購入する割合が増加しています。さらに、購買型クラウドファンディングにおいて様々な機能を持つ傘が多数紹介されており、これらも含め購入経路の細分化が進んでいるといえます。

まだ本格的な傘の購入をしたことがない方は、百貨店や傘専門店で気になる点をショップスタッフに聞いて検討するのが良いでしょう。日本洋傘振興協議会(JUPA)では、アンブレラ・マスターという傘販売の専門家を認定しており、百貨店や傘専門店のスタッフを中心に取得されています。

 

まとめ

傘が皆さんの手元に届くまで、いろいろな業者がかかわっていることに改めて驚かれた方もいるのではないでしょうか。
また、傘は1本あたり40~50個のパーツが使われているといわれています。そのようなパーツの一つ一つを作成する会社があり、傘として使えるように組み立てる会社があります。
以前に比べると日本国内でつくられる傘は、海外でつくられる傘と比べて少なくなりました。
ただしメイドインジャパンの傘もまだまだ百貨店などで販売していますので、手に取っていただきその技術を感じてみてはいかがでしょうか。