傘雑話集

和傘の臨在感

和傘の臨在感

傘には大雑把に和傘と洋傘が存在します。少なくとも江戸時代まで主流であったのが和傘であり、明治以降、世間に広まっていったのが洋傘です。江戸の傘張り職人が直していたのは和傘であり、現代の私たちが通勤通学に用いているものは洋傘という事になります。

もちろん、洋傘が日本に入ってきて以降、普及が進むまではその両方が使用されてきた時期もあったわけですが、現代において和傘はイベントや観光地などの特殊な状況でしか使用されていないというのが現状です。ほとんどの人は、和傘を映像以外では見たこともないし、触ったこともないというのが普通かなとは思います。

さて、文明開化以降、洋傘にとってかわられてしまった和傘ですが、シンプルに使い勝手が悪いという事がその数を減少させられてしまった原因です。その原因を簡単に書いていきましょう。

まず、第一に重い事です。正確には雨天時に重い事と言った方が良いでしょうか?乾いた状態では洋傘よりも100g程度重いだけなのですが、水にぬれると重さが倍加してしまうため、本当に重く感じると思います。水を含んだ状態ですと、60cmサイズの傘で、ざっと700gから800gの重さなので、正直なところ高齢者が持つのは厳しいレベルかなと思います。普通の洋傘は60cmの長傘なら大体300gから400gの範囲ですから、本当に倍という感じです。これでは使われなくなっていくのは仕方のないところかなと思います。

次に洋傘に比べると管理が大変であることです。和傘の材料はほぼ天然素材であることから、防虫、防カビ、除湿と天然由来の糸で織られた生地から作られる洋服と同じような扱いが必要です。洋傘の場合ももちろん和傘と同レベルで丁寧に管理すれば長持ちするわけではありますが、一般的には化学繊維の布生地を張っているため、そこまでしなくても3年は問題が起きない事が多いです。これに対し和傘は管理を怠ると1年のうちに悪くなってしまう事も十分にあります。

というわけで、洋傘は軽いし管理が簡単だという事で、すぐに庶民に広まっていき、現在に至っています。

ですが、和傘はまだ現代に生き続けています。その理由は存在感、つまり映えるからです。面白いことに和傘を使用する祭りは幾多あれど、洋傘を使う祭りはほとんどありません(たくさん広げて魅せるイベントはありますが)。また、日本人観光客でも外国の観光客でも和傘を持っての写真撮影は人気ですが、洋傘をわざわざ持って撮影したいというケースは限られます。非日常というだけでなく、やはり粋という言葉で表すしかうまい言葉が出てきませんが、そこにあるだけで何かを感じられるそんな道具が和傘なのです。

自宅に置くのは大変なので推奨はしませんが、見かけることがありましたら手に取って色々と実感してみることをお勧めします。