傘と文化との関係

過去の魅力が再び!レトロブームで懐かしさと新しさが融合!

レトロブームとは

「レトロ」という言葉は、辞書ではretrospective(レトロスペクティブ、回顧)の略語で、 懐古趣味のこと、と説明されています。
世の中にはいろいろなモノがあふれていますが、全くの新しいものというものは意外に少なく、多くのものは以前からあるものに現代風のアレンジがされたデザインになっています。
そのような中でもより懐かしさを強く感じるものや、昔のものであることを強調しているモノがあります。
また、時代のタイミングによってある「レトロ」なものが多くの人に積極的に取り入れられてブームになることもあります。
今回はそんなレトロブームについてまとめてみました。

レトロブームの種類

レトロブームは、数年ごとにやってきます。大正や昭和など、過去の時代が定期的に注目され、「古き良き時代のもの」として再評価されます。
1980年代から始まったレトロブームは、1920年代から1950年代までの時代を懐かしむムーブメントでした。このブームの一因は、家庭用ビデオデッキやビデオソフトの普及です(普及率:1985年で30%、1989年で63%)。これにより、過去の映像を手軽に楽しむことができ、懐かしさを感じる人々が増えました。
最近では、2020年頃から注目された「平成レトロ」もあります。このムーブメントでは、1980年代後半から1990年代にかけてのグッズやアニメが人気を集めました。

大正レトロ(大正ロマン)

「大正ロマン」とは、大正時代に進んだ近代化の中で生まれた独特な芸術・文化・思想を指す言葉です。この時代は、伝統と近代化が交錯し、古き良き時代としても評価されることもあります。「大正ロマン」や「大正浪漫」という言葉はほぼ同じ意味で使われます。
「大正ロマン」は、大正時代の個人の解放や民主化運動、新しい時代への理想に満ちた風潮や、和洋折衷の先進的な文化を指します。この言葉は、明治時代まで流行していたロマン主義(明治浪漫主義)と大正時代の文化を結びつけ、また甘美で抒情的でロマンチックな憧れも含めて使われるようになりました。
 

昭和レトロ

「昭和レトロ」とは、昭和時代の懐かしい雰囲気や憧れを指す言葉です。昭和初期のちゃぶ台や吊り下げ照明、ブラウン管テレビ、カラフルな合皮のソファなど、ポップな色使いや昔ながらの雰囲気が特徴です。また、古びたフォントや色あせたカラー、分かりやすいレイアウトも目立ちます。さらに、使い捨てカメラやレコード、カセット、純喫茶、シティポップなど、昭和後期の要素も人気です。昭和の商店街を再現した遊園地も存在します。このトレンドは2010年代を中心に現在も人気が続いています。
 

平成レトロ

「平成レトロ」とは、1990年代中頃に流行した文化を、当時を知らない「Z世代」(1990年代後半〜2010年代生まれの世代)が新鮮に楽しむ現象を指します。このトレンドでは、ルーズソックスを履いたギャルやガラケー、プリクラの落書きなど、1990年代の特徴的な要素が人気です。例えば、「フィルムカメラ」を使って写真を撮り、現像するまで結果がわからない状態を楽しんだり、女子高生の頃のようにガラケーをデコレーションしてSNSに投稿するなど、楽しみ方は多岐に渡ります。

レトロブーム(リバイバル)の原因

一般的に、流行のサイクルは約20年とされています。特にファッション業界では「リバイバルファッション20年説」と呼ばれる現象があります。これは、約20年前のトレンドが再び注目を集める現象です。たとえば、80年代には50年代や60年代のファッションが人気となり、90年代には70年代が脚光を浴びました。2000年代に入ると80年代が再評価されました。この20年説の背景には次のような要素があります。

①トレンドを企画・発信する人々の多くが30代から40代で、自身が10代や20代の頃に流行していたものを現代風にアレンジして商品を制作するため。

② 約20年の経過により、当時の世代を生きた若者たちはそのブームを忘れ去っていますが、ファッションをリードする10代から20代の若者たちにとっては20年前のトレンドが「新鮮で新しく、魅力的なもの」「流行が一巡したことによる独特の魅力」となるから。

特に「Z世代」と呼ばれる現代の若者がレトロに魅了される理由は、次の要素が挙げられます。
①Z世代やミレニアル世代はデジタルネイティブであり、レトロの良さに「アナログで触れられる感覚」「均一ではなく、完璧でない要素」「昔の時代の不便さを体験すること」「歴史的な安心感」などの感情的な共感を抱いているから。

② オフラインで特別な場所で記念撮影ができ、その瞬間を再現できることで、オンライン上で共有できる仕組みが存在しているから。

③ 不確実性の高いVUCA社会の中で、Z世代やミレニアル世代は「シンプルで快適だった時代」への憧れを抱いている可能性があるから。昔の時代に触れることが、現代の息苦しさを打ち破る手段として捉えられ、リスペクトと憧れが根底にあるのではないか。

④ レトロブームを捉える上で、「サステナビリティ(持続可能性)」が重要なキーワードとなりました。人々は商品の社会的・文化的な価値や意味に共感し、選択するようになりました。その中で、Z世代やミレニアル世代は環境に配慮されたリメイク商品やジャンク品に魅力を感じ、積極的に購入する傾向があるから。

⑤ コレクションや有名人がテレビやSNS、雑誌などで積極的に紹介することにより、消費者が同じアイテムに注目し、購入することで流行が広がります。特にSNSの普及により、海外の文化が身近になったことで、欧米などのレトロトレンドが若者の間で流行するようになりました。さらに、最近では韓国ブームの影響を受けて、K-POPアイドルや韓国の俳優が使用したレトロアイテムを真似する若者が増えています。

レトロな洋傘

傘においてレトロといえば昔からある和傘が真っ先に浮かぶかと思いますが、江戸後期に日本へ入ってきたといわれている洋傘においても時代ごとに特徴がみられます。日本国内で洋傘が普及し始めた明治時代から今まで160年ほどの間、いろいろなタイプの傘が作られてます。

明治時代の洋傘

洋傘は、文明開化の象徴として広まっていきました。その形がコウモリの翼に似ていることから、「蝙蝠傘(こうもりがさ)」と呼ばれるようになりました。最初は黒い色が主流でした。後に、日本でも洋傘の国内製造が試みられ、1872年には「坂本商店」というお店が、輸入された洋傘の部品を使って日本製の洋傘を作りました。生地には「甲斐絹」と呼ばれる、緻密に織られた平織りの絹布が使用されました。ちなみに、坂本商店は江戸時代には「仙女香」という白粉の販売店として知られていました。明治時代後期には、セルロイドでできた手元(持ち手)の洋傘が流行しました。

大正時代の洋傘

洋傘の分野では、日傘が伝統工芸品として高く評価される時代がありました。実用だけでなく、ファッションアイテムとしても人気を集めました。さらに、洋傘はアジア諸国への主要な輸出品の一つになりました。最初は無地の黒い洋傘が多かったのですが、一部の上流階級の女性たちはおしゃれな洋傘を使っていました。生地には、着物用の絹織物や染め物に西洋の技術を取り入れたレースや刺繍が使われるようになりました。また、洋傘の手元(持ち手)には、象牙や鼈甲でできた彫刻や、蒔絵や螺鈿、彫金など、職人の技術が活かされた素敵なデザインが数多く作られました。

昭和時代の洋傘

洋傘の製造も拡大され、輸出の花形商品に成長する時代でもあります。
また、昭和の中頃には、折りたたみ骨の開発が進められ、2段中棒のホック式や3段中棒のコンパクトタイプ、さらに小型軽量化の波に乗り多段式のミニ骨が登場しています。傘生地についてもナイロンやポリエステルが扱われるようになり、折りたたみ骨とセットで大流行しました。

昭和18年出版 今村僚乃右著「洋傘起源と歴史」より手元の写真

昭和18年出版 今村僚乃右著「洋傘起源と歴史」より傘の写真

まとめ

洋傘にも時代ごとに特色がありますので、好みに合ったタイプの傘を手にしてみてはいかがでしょうか。今の時代からみると新鮮な感じを受けることもありますし、懐かしさを感じることもあると思います。
またフリマアプリで「昭和レトロ傘」などと検索すると、当時の傘がでてきますので興味ある方は見てみてはいかがでしょうか。