傘のおすすめ

高齢者の握力について、低下してきた握力でも持ちやすい傘とは?

年齢が高くなってくると、いろいろな場面で筋力が落ちていることを実感しませんか?
意識して鍛えないと、ちょっとしたところでつまづいたり、重いものが持てなくなったり、生活のいろいろな場面で困ることが出てきます。
例えば雨が降ったときに傘を差しますが、最近傘をさすのが大変になってきたと感じてきたら、それは握力や腕力が低下したサインかもしれません。
今回は高齢者の握力について、改めて考えてみました。

握力とは

握力とは、物を握るときに発揮される力のことで、主に前腕部と上腕部の筋によって力が発揮されます。主に上半身の筋力となりますが、握力は全身の総合的な筋力と関連があることが多くの研究で明らかになっています。

また、握力は簡便かつ安全に測定ができることから、筋力測定の指標として多く用いられます。

握力の平均値は年代によって異なり、一般的には男子は40~44歳、女子は35~39歳でピークに達し、その後加齢に伴い低下します。

60歳以上の中高齢者の握力の平均値は、60~64歳の男性42.40㎏ 女性26.36kg、65~69歳の男性39.38kg 女性24.85kg、70~74歳の男性37.25kg 女性23.78kg、75~79歳の男性34.93kg 女性22.32kgとなっています。

スポーツ庁 令和3年度体力・運動能力調査

【握力測定のメリット】
・握力の平均値は他の人と比較しやすい
・握力と他の筋力検査との相関が高い
・握力と足の指(足趾)の把持力との相関が高い
・握力と太もも(大腿四頭筋)の筋力との相関が高い
・握力と全身の筋力(骨格筋量)との相関が高い
・握力は高齢者のサルコペニアの診断基準の一つとして活用できる
・握力の低下と認知症の発生リスクの相関がある

※後で説明がありますが「サルコペニア」とは、主に加齢により全身の筋肉量と筋力が自然低下し、身体能力が低下した状態と定義されており、「加齢性筋肉減弱現象」とも呼ばれています。

握力が低下するとADLの低下にもつながる

日常生活動作:ADL(activities of daily living)は、日々の生活を営む上で不可欠な基本的行動への指標です。
食事や排せつ、入浴などの日常的な動作には複雑な動作が組み合わされているケースが多いのですが、握力が低下していると次のような動作が困難になります。

・重いものを長時間持てない(買い物など)
・瓶やペットボトルが開けられない
・ひねるタイプのドアが開けにくい
・物をよく落とし、壊す
・食事を摂るのが難しい

上記の例は下に行くほど握力が低下しており、箸の使用が困難であれば代替案もありますが、スプーンを持つことも困難であれば自助具や時に介護が必要になってしまいます。
握力は健康な人でも40代前後には大きく低下する傾向にあります。

サルコペニアとは

人間は、加齢に伴い身体機能が低下(虚弱化)すると考えられます。
転倒、認知機能の低下、尿失禁、骨粗鬆症、筋肉の衰弱、歩行障害や関節障害など、いずれも高齢期の生活に負の影響をもたらす症状が現れ、その中でも特に筋肉量の減少症がサルコペニアです。
加齢にともなう筋量の減少や筋力の低下は、身体機能を低下させ、転倒・骨折や寝たきりの一因となり要支援・要介護状態に至ります。また寝たきりに至らずとも、日常生活動作や生活の質を悪化させるなど、サルコペニアは健康長寿の実現に対する大きな障害になります。

◆手先のトレーニング

・負荷が軽い状態で手のひらの開閉(グーパー運動)

肩の高さに手を挙げて、肘をまっすぐ前に伸ばし5秒ほどかけて手のひらを開く。
その後5秒かけて手のひらを閉じる。一日30回程度から始め、少しずつ負荷を増やす。

空いた時間に少しずつ取り入れてもOK。
お風呂に入ったときに手のひらを温めつつ水圧を利用して負荷を増すことも効果的。

・ゴムボールやハンドグリップを使った手のひらの開閉

先ほどのグーパー運動と基本的には一緒ですが、器具を使う分効率よく握力が鍛えられます。
いきなりハンドグリップを使用するとさらに手を傷める原因にもなりますので、トレーニング初期はゴムボールなどの柔らかい素材のものから使用しましょう。

・指先のトレーニング

片手の指を曲げ、反対の手の指へ絡めて軽く引っ張ります。
まずは指一本対四本で、四本の指全体に一本の指をひっかけるところから始め、指の数を増やしていきましょう。

この時、本数の少ない方の指で引っ張る力をかけます。
本数の多い方の手は、あくまで補助として力をかける程度に収めます。
両手で強く引っ張り合わず片側のみ力をかけ、万が一痛みを感じたら中止しましょう。

◆腕力のリハビリテーション

・ペットボトルダンベル

まず、ペットボトルの中に水を入れ、肘の高さで前に伸ばし両手に持ち、手のひらを天井側にします。
ゆっくり時間をかけて、肘を曲げ伸ばしします。

肘から手首までの筋力増強だけでなくペットボトルを握るので、握力に直接アプローチもできます。
肘の曲げ伸ばしに不安がある人は、手首の上げ下げや回転だけゆっくり取り入れてもよいでしょう。
なお、最近では真ん中がくびれたデザインのペットボトルも増えています。
このようなデザインのボトルを使うと滑って落とす可能性が少なくなります。

・壁腕立て

肩幅ほどに足を開き、壁に対し20~30センチほどつま先を離して立ちます。
胸の高さ程度に手をあげ、壁に手をつきます。
ゆっくり壁に体重をかけ、前傾します。

この時腰を折り曲げず、足首から頭が一直線になることを想定します。
また、肘を過剰に外側へ開かないよう気を付けましょう。
体力のない高齢者の方がいきなり腕立て伏せをするのは困難ですが、壁腕立ては自重を使い効率的に腕立てができます。

・雑巾絞り

左右の力を別方向にかける「雑巾絞り」は、効率よく手先と腕力を鍛えられます。
濡らす必要はありませんので、しっかり握れるサイズのタオルを使用しましょう。
逆手にする手を入れ替えたり、両手を縦に並べて絞るなど、違う力のかかり方を意識すると効果的です。

握力が低下してきたときの傘

手元の形

一部の折りたたみ傘にあるような小さな手元では握りにくいため余計な握力を使うことになります。手全体で持つことができる大きさの手元がついた傘が適しています。
また自然物の手元のうち寒竹やコンゴの場合、節で凸凹している形状のため手で握ったときにズレにくく握る力が傘に伝わりやすいです。
傘を買うときは実際に広げて持った時に手元が持ちやすくしっくりくるか確認してみてください。

手元の材質

雨や汗で滑りやすい素材でできた手元は、握力の弱い人の傘には向いていません。少しざらついている、もしくは水分を吸収する素材であれば問題はありません。
天然素材の手元の方が向いていると思います。その中でも籐や竹などの天然素材は軽量でもあるため、高齢者に向いていると思います。

傘全体の重量

握力が低下してくると重い物を長時間持つことが難しくなります。そのため、なるべく軽量のものが向いてます。
体の大きさに合ったサイズの傘を選ぶことが重要です。濡れたくない気持ちはわかりますが、大は小を兼ねるとして大き目の傘を持つと、結構負担に感じるかもしれません。

全体のバランス

傘を広げて手に持ったときの重量のバランスによっても重さの感じ方や持ちやすさが変わります。
傘を差したときの上部が重いバランスのものよりも、手元部分が重いバランスの方が持った時の手にかかる負担が少なくなります。
買うときは傘を広げてみて、持ちやすいバランスかどうか確認してみてください。

まとめ

40代になったら握力が低下してくるといわれています。
気になりだした方は、握力強化のトレーニングをやりつつ、握りやすい手元の傘をチョイスするようにしてはいかがでしょうか。
風や雨が強めの時でも持ちやすくなり、しっかりと傘をさすことができるようになります。

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