傘のおすすめ

高齢者の歩行と杖(ステッキ) 傘は杖になる?

杖と長傘は形が似ていますね。どちらも細長く、一方を手に持って、反対側を地面に突くように使うことがあります。
英国紳士の姿は、傘かステッキのいずれかを手にしているのが定番です。ただし傘と杖は、それぞれに用途は大きく異なります。
傘については当サイト「傘全集」に沢山の記事がありますので、今回は杖(ステッキ)について概要をお伝えします。

1.高齢者の歩き方の特長

年齢が高くなると若いころと比べて歩き方が変わってくるといわれますが、ご存じでしょうか。これは加齢による肉体の変化によって歩き方も変わってくるからです。
例えば次のように変わってきます。

高齢者の歩行の特長

1. 歩くスピードが遅くなる • 歩幅の低下 • 歩行率(一定時間に何歩進んだか)の低下
2. 前かがみになってしまう
3. 足が上がりにくくなる • 股関節、膝関節、足関節の運動範囲が減少する
4. つまづきやすくなる • 筋力が低下し、足が上がりにくくなる
5. バランスが悪くなり転倒 • 下肢の支持時間(床に足底が着いて身体を支える時間)の減少
6. 長い時間歩けなくなる

加齢による歩行能力の低下と運動の重要性

老化による身体変化としてまず挙げられるのが、筋力の低下です。特に下半身の大腿四頭筋(太もも前面の大きな筋肉)から衰えると言われています。
下半身の筋力が衰えると、疲れやすくなり、動くのが億劫になり日常の活動量が減りがちです。
また、加齢により平衡感覚の低下や皮膚の感覚鈍化(特に足の裏)が起こることで、バランス能力が衰え、身体がふらつきやすくなると言われています。
このようなことから高齢者の歩行の特長が現れてくることになります。
とくに、歩行速度は死亡リスクとの関連性も強く、高齢者の身体機能、日常生活機能の指標となります。歩行速度が速いほど生活機能が維持しやすく余命も長いとされています。

2.フレイルとは

フレイルは、厚生労働省研究班の報告書では「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」とされており、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。

フレイルのチェック項目

※3つ以上あてはまると「フレイル」、1つでもあてはまると「プレフレイル」です。

体重減少(6ヶ月で2~3kg以上の体重減少)
筋力低下(握力が男性26kg、女性18kg未満)
疲労感(ここ2週間でわけもなく疲れたような感じ)
歩行速度の低下(通常歩行で毎秒1m未満)
身体活動(軽い運動・定期的な運動を週に1度もしていない)

(日本老年医学会日本版CHS基準より)

フレイル予防のためには「栄養・運動・社会参加」の3要素が重要です。
まずは栄養バランスの取れた食事が大切です。特に筋肉の元となるたんぱく質が不足しないよう注意して摂るようにしましょう。
次に運動です。立つ・座る・歩くなどの基本的な移動機能に必要な下肢や体幹の筋肉の筋力トレーニングが有効とされています。ウォーキングや集団体操などの低負荷運動でも、継続して行うことで日常の活動量を増やし、筋力を維持することができます。
また運動の継続は、外出機会の増加や社会参加の促進にもつながるので、フレイル予防にはとてもおすすめです。
地域での包括的なケアやコミュニティでの活動などを通じて、社会参加を促しましょう。

3.介護杖・歩行杖・杖(ステッキ)について

高齢になり歩くときにつまづきやすくなったり、転倒したりしやすくなったときに助けになるのが杖などの補助具です。

杖は、歩行時に身体を支え、バランスを維持します。足腰への負担を減らす、障害物を避けることができます。また、T字杖、四点杖、折りたたみ杖などさまざまなタイプがそろっています。身体状況を考慮し、無理なく使える杖を選びましょう。

杖の長さの目安

目安の長さ=身長÷2+2~3㎝(身長170㎝の場合、87~88㎝)
そのほか、杖の合わせ方には3種類あります。
1、肘を曲げた角度が30度になる長さ
2、床面から足の付け根までの長さ
3、腕を垂直に降ろした時の手首の長さ

場合によって、傘を杖のように使用する可能性があるときは傘の「全長」を杖の長さの目安に合わせてみてはいかがでしょうか。ただし丈夫な傘であっても、傘は杖と同じ用途で作られたものではありませんので、杖と同じように常に使用できるわけではないという点はご注意ください。

また、ステッキの中には高級傘の手元と同じような寒竹や高級木材などの自然物の製品もあります。英国紳士が持つようなステッキは実用面と併せておしゃれ面でも役立つ一品です。

使い方・持ち方

杖を使って歩くときは、次の順番で進むとバランスを取りやすくなります。
① 杖をつま先からおよそ 15cm外側,15cm 前方あたりにつく、
② 杖を持った手と反対側の足を一歩踏み出す、
③ 杖を持った側の足を踏み出す、
④ 杖をつく、
⑤ 杖とは反対側の足を出す、
⑥ 杖側の足を出す
⑦ ①から繰り返し、、、、、

歩行器

四脚のフレーム構造で、握り部以外には支持部のない歩行補助具。
固定型、交互型、四脚二輪付き、線腕型など様々なタイプがあります。

シルバーカー

フレームの下に車輪が付いた歩行補助具。
障害の軽度の方や脚力の弱ってきた高齢者の外出を補助し、行動範囲を広げます。椅子付きタイプもあります。

4.歩行障害

「歩行障害」とは、歩行に必要な体の各部位が先天性または後天性による何らかの障害の影響を受ける事で、歩行困難もしくは全く歩けない状態のことをいいます。

高齢者に多い歩行障害の症状や種類
脳神経疾患に多い歩行障害痙性歩行、はさみ足歩行、鶏歩、動揺性歩行、小刻み歩行、失調性歩行
骨や関節系に多い歩行障害間欠性跛行、墜落性跛行
心因性歩行障害や原因不明の歩行障害心因性歩行障害

 

歩行障害を引き起こす症状例
脳に関わる病気脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、脳卒中、ウェルニッケ脳症
動脈硬化(血液・血流)に関わる病気閉塞性動脈硬化症
神経に関わる病気腰部脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症
筋肉に関わる病気・症状パーキンソン病、サルコペニア
筋肉・骨の双方が関連している疾患足の変形、外傷

 

歩行障害には上記のように色々な症状や原因がありますので、不具合を感じたときはかかりつけ医や専門医で診察・治療をしてもらいましょう。

まとめ

今回は以下について紹介しました。

・高齢者の歩行の特長、原因、注意
・補助器具、杖の使い方(傘を杖のように使用する場合を含む)
・歩行困難の場合の症状や原因について紹介

また、ステッキと傘の形状が似ていると書きましたが、歩行補助具としてのSG基準を満たす傘はほとんどないので、多くの傘は杖と同等に使用することはできません。せいぜいたまにちょっと体を支えるくらいが関の山でしょうか。同様に杖には雨や日光を防ぐ手立てはありませんので傘の代わりになることは全くできません。ただし両方持つことは大変ですので、良い方法がないかと思われるところです。

英国紳士の身だしなみがステッキから洋傘に移っていった点では、傘とステッキには大きな関連性があります。木や竹などの天然素材は、傘の手元とステッキで同じものが使われています(長さは違いますが)。ステッキをきっかけに傘の手元の素材にも関心を持っていただければと思います。

竹製の杖

英国紳士と傘との関係について以下の記事をご覧ください。