傘を取り巻く環境

品質と安全:傘の規格の重要性

日頃何気なく使っている傘にもいろいろな規格があることをご存じですか。
傘を安全に消費者へ届けるためにいろいろな角度から基準を定め、それをクリアした傘が明らかになるようにしています。子供から大人まで、雨や強い日差しなど避けたいものから身を守るために使われるのが傘です。
今回は傘の工業製品的なところが前面に出ますが、どのような規格や検査があるのか確認してみましょう。

傘の表示について

傘の性能や機能についてタグやラベル、説明書などに表示されているのを見たことがあると思います。この表示に関するルールは消費者庁の管轄です。

家庭用品品質表示法とは

「家庭用品品質表示法」は、消費者が日常使用する家庭用品を対象に、商品の品質について事業者が表示すべき事項や表示方法を定めており、これにより消費者が商品の購入をする際に適切な情報提供を受けることができるように制定された法律です

家庭用品品質表示法における洋傘の表示について
定義
雨雪・日光を防ぐために頭上にかざすもの。携帯用の雨傘・日傘のほかに、ビーチパラソル及びガーデンパラソルのような定置用の大型の日傘も含まれる。
1.傘生地の組成

洋傘の傘生地が繊維製品のものについては、『繊維製品品質表示規程』の規定に準じ、【繊維の名称を示す用語】にその「繊維の混用率を示す数値」を併記して表示する。
上記において特に注意すべきは、「繊維の名称は指定用語を使用する」「混用率が合計100になるように表示する」ことである。
合成樹脂を使用したものには、『合成樹脂加工品品質表示規程』に準じて原料樹脂の種類を表示する。

2.親骨の長さ

親骨とは洋傘の生地に密着し、これを支えている主要な骨のこと。この親骨の先端から末端までの長さをセンチメートル単位で表示する(許容範囲は、表示値の±5mm以内)
折りたたみ式、スライド式等のものは、伸ばした状態で測る。

3.取扱い上の注意

次に掲げる事項を製品の形状又は品質に応じて適切に表示する。
《イ》特に風向きに注意し、強風のときは使用しない旨。また、パラソルから離れるときは傘を閉じる旨(ビーチパラソル及びガーデンパラソルに限る)。
《ロ》中棒に埋めるべき深さの指示標識が施されている場合は、その指示標識いっぱいに地中に埋める旨(ビーチパラソル及びガーデンパラソルに限る)。
《ハ》傘の開閉時及びシャフトの伸縮時には、顔や身体から離して使用する旨(ジャンプ式の折り畳み傘に限る)。
《ニ》使用方法に関する注意事項。

4.表示者名等の付記

表示した者の「氏名又は名称」及び「住所又は電話番号」を付記し、責任の所在を明確にする。

5.表示方法等

洋傘ごとに、消費者の見やすい箇所に分かりやすく記載する。
※ただし、取扱い上の注意については、本体から容易に離れない方法(下げ札、縫い付けたラベル、貼付けたラベル等)にて表示する。

表示例


上記、消費者庁HPより引用

規格1 JUPA(ジュパ)基準について

雨傘に関して、1994年にJIS規格(JIS S4020)が制定され、その後廃止となりましたが、現在のJUPA基準はその内容を踏襲しています。
「JUPAマーク」は、日本洋傘振興協議会の会員が「JUPA基準」を満たす製品にだけつけることができる品質証明のマークです。

「JUPAマーク」は1969年に誕生して以来、会員企業の洋傘品質と安全性の向上を目指す基準となっています。年々、基準の内容が充実し、また、会員企業にとってはファッショントレンドの研究や機能向上の努力を促す要素となっています。

消費者は「JUPAマーク」が付いている製品を安心して使用できるだけでなく、ファッション性も楽しめます。洋傘振興協議会会員は、1997年以降、「JUPAマーク」を品質表示カードに掲示し、品質表示法に基づく管理番号も併記しています。表示者としては、各会員企業または協議会の連絡先が明確に示されています。

購入時には品質表示カードを確認し、このカードを保存しておくと修理などの際に便利です。「JUPAマーク」は傘にも中縫片布(=傘生地の裏側に縫い付けられているタグ)として貼り付けられており、会員企業が表示を行っているため、購入者は品質の基準として確認できます。「JUPAマーク」が付いている製品をお選びいただくことで、洋傘文化の発展にもご協力いただけます。
また傘を開くと、内側の中央には「JUPAマーク」がシールとして貼られています。製品の構造により、別の位置に貼られていることもあります。このマークには製造した会員企業の番号(4桁の数字)が記載されており、何か問題や不具合があった場合には、すぐに対応できるようになっています。

「JUPA基準」の詳細につきましては、こちらをご覧ください。


  

※「品質表示カード」には、JUPAマークと、その隣に製造者又は取扱者を表す「1から始まる4桁のJUPA番号」と「連絡先」が記載されています。
※中縫片布にも、「JUPAマーク」と「JUPA番号」が記載されています。

規格2 SG基準 学童用かさ

学童用かさの安全性品質及び消費者が誤った使用をしないための必要事項を定め、一般消費者の生命又は身体に対する被害の発生を防止することを目的としています。
かさの生地が主として繊維製の学童用かさ(以下「かさ」という。)について適用しますが、折り畳みかさは除きます。なお、ここでいうかさの使用年令範囲は、標準として3才児から小学生までとします。

安全性品質
1.外観、構造及び寸法
2.耐漏水性
3.強度
4.開かさ速度
5.耐久性
6.耐食性
7.付属品表示及び取扱説明書
1.表示
2.取扱説明書

一般財団法人製品安全協会サイト 学童用かさのSG基準より抜粋

洋傘の検査について


洋傘の安全性を調べるための検査について紹介します。
主な試験項目についてJUPA基準より抜粋した表です。このような検査項目があります。

傘全体操作性
耐久性
耐漏水性
強度中棒の曲げ強度
中棒と手元の取付強度
中棒と上ろくろの取付高度
中棒の引張強度
傘の骨の強度
生地防水試験耐水度
はっ水度
染色堅ろう度耐光性
水堅ろう度
耐摩擦度
昇華堅ろう度
寸法変化度
引張強度
紫外線遮蔽率(雨傘は無し)
遮光率
遮熱率
表面処理めっき層
耐食性
膜の強さ

1.耐久性試験とは?

「耐久性」では、半開きの状態からスタートして10秒に1回の速さで500回開閉させ、各部に“がたつき”や“外れ”などがないかを確認します。折りたたみ傘は中棒(シャフト)が伸びた状態で行います

2.耐漏水性試験とは?

傘が水漏れしないかどうかを確認する試験です。

[試験方法]
①保持具に傘を取り付け、人工降雨試験装置を降雨量が20±2 mm/hとなるように調整して20分間降雨させます。
傘の開いた状態で固定し、人工降雨試験装置を使用して1時間に20±2mmの人工雨を20分間降雨させる。
②傘の内部に伝水(水漏れ)がないかを目視によって調べます。傘の内部に伝水の有無を目視によって調べる。
③傘の内部の水滴があれば、水滴の数を数えます。傘内部の水滴数を数える。

3.傘の中棒の曲げ強度試験とは?

傘使用時の中棒に加わる負荷に対して異常が生じないことを確認します。

[試験方法]
傘を閉じた状態で、手元を下はじきの溝を横向きにした状態で水平に固定した後、
石突きの先端部に15N(学童傘の場合は20N)(ニュートン:1ニュートンは、1kgの質量を持つ物体に1m/s²加速度を生じさせる力)の錘を吊るし、1分間保持する。
錘を除去し、残留たわみ及び使用上支障がある緩み、変形などの有無を観察する。
②傘生地及び親骨を取り去って、同様に固定し、全長の5分のLまでたわませ、1分間保持した後、中棒の破断の有無を観察する。
※L:中棒と手元の取付部から石突きまでの長さ

4.傘の骨の強度試験とは?

[試験方法]
①傘を開いた状態で中棒を水平にして、手元および石突きを固定します。
②傘の内側の方向に親骨の先端部に 6N(ニュートン:1ニュートンは、1 kgの質量を持つ物体に1m/s²の加速度を生じさせる力)の荷重を加え、1分間保持した後、骨各部にき裂、破損、破断などの異常の有無を目視によって調べます。
③骨各部に著しい変形がないことを目視によって調べます。
傘骨の強さ試験 2

傘使用時の回転動作による負荷に対して異常が生じないことを確認します。

[試験方法]
回転トルク試験機に手元を固定し、180度の角度で1分間に40回、左右に繰り返し反転させ、傘各部に異常がないことを確認します。

5.防水性試験とは?

防水性試験には、「耐水度試験」と「はっ水度試験」の2種類があります。いずれも、傘生地に対する試験です。

耐水度試験
[試験方法]
①試験機の水槽に水を入れ、試験片(傘生地)を試験機にセットします。
②水槽を上昇させることで、試験片(傘生地)を加圧します。
③水槽の高さ(水位)分の圧力が生地にかかり、生地から水滴で出てきたポイントを測定します。
はっ水度試験
[試験方法]
①傘生地に対して、水250mlを25~30秒間、散布します。
②保持具を外して試験片の表側を下向きにして固い物に軽く当てて水滴を落とした後、比較見本と比較し、判定します。

まとめ

洋傘の規格について紹介しました。身の回りの製品には様々な規格があり、それを通過したものが製品として流通しています。傘についてもJUPA基準やSG基準が定められており、製品の安全性を証明しています。そしてそれらの製品の情報が正しく消費者に伝わるように家庭用品品質表示法によって洋傘も表示すべき情報が定められています。
洋傘を買うときはデザインもとても大切ですが、その傘がどのような素材か、基準をクリアしている製品か、などタグやラベルにも注意してみてはいかがでしょうか。

参考サイト
消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_03.html
消費科学研究所
https://www.shoukaken.co.jp/news/1665/
一般財団法人日本繊維製品品質技術センター
https://www.qtec.or.jp/work/20160331_343.html
一般財団法人ボーケン品質評価機構(通称 ボーケン 旧法人名 財団法人日本紡績検査協会)
https://www.boken.or.jp/find_tests/lifestyle_goods_find_tests/lifestyle_goods_product_test/1931/
洋傘タイムス
https://www.rakuten.ne.jp/gold/kasaya/times/13-06.htm
一般財団法人カケンテストセンター
https://www.kaken.or.jp/test/search