傘を取り巻く環境

耐風傘について 強風と傘の関係

強風で傘を使わなければならないとき、とても苦労した経験があるのではないでしょうか。傘をさして歩くことも大変ですし、時には傘がひっくり返ったり(おちょこになる)、骨が折れたり、生地が破れたりして壊れてしまったかも。

そのような経験をした方々にとって、強風でも耐える丈夫な傘というのは買うときの大きなポイントになると思います。そして傘の中には様々な工夫によって風に強い傘として機能を開発しているモノもいろいろと見かけます。そんな傘と耐風についていろいろな角度から見てみたいと思います。

耐風傘の種類


大きく分類すると、
①形状を工夫することで風圧をまともに受けても壊れないようにする、
②傘の骨を改良して風圧に対する強度を高めたり、風圧から壊れる前に力を逃がす仕組みにする、
となります。

  • 傘の形の工夫:傘の形が流線型で風を受け流す形になっている
  • 傘布の工夫:生地に風を逃がす隙間や穴がある
  • 骨の工夫1:裏返らないように骨の数を増やして構造を頑丈にする
  • 骨の工夫2:骨の材質をグラスファイバーやカーボンで強化する
  • 骨の工夫3:ダボ部分の早めの骨折れによって決定的な破損を防ぐ
  • 骨の工夫4:骨のスライドやバネの作用を活用することで風力を逃がし壊れにくくする

また、耐風仕様の傘として実際に販売されているほかに、様々なアイデアが考えられて特許として届け出されているものがあります。興味がある方は以下のサイトから「耐風」、「強風」、「傘」などのキーワードを入れて調べてみてはいかがでしょうか。

特許情報プラットホームhttps://www.j-platpat.inpit.go.jp/

耐風の基準はあるの?

日本洋傘振興協議会が傘の品質基準として定めているJUPA基準には耐風項目はありません。
協議会としては、「耐風傘」の表記については明確な基準がない中で使用を控えるように取り決めています。
そのため「耐風傘」、「耐風機能」、「耐風仕様」などの表記や説明は、それぞれの会社で独自に検査して、効果をうたっている項目になります。

傘と耐風に関する研究

強風時の傘の使用については、傘自体の耐久性の問題もありますが、傘を持つ角度によって風を受ける強さが変わってきます。実際に風をまともに受けたことで傘を持っていかれそうになった経験があるかと思います。

そんな強風における傘の使用について研究している論文がいくつかありましたので、紹介します。

論文:「急な風速変動下で傘に作用する空気力の特性」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaweam/2005/0/2005_0_43/_article/-char/ja/
風雨が強い中で傘を差している歩行者の転倒事故など,最も身近な道具の一つである傘の対風挙動は人間の安全にかかわる問題といえる.そこで,風速をステップ上に瞬間的に変化する気流を与えたときに傘に作用する空気力の特性を調べた.傘の姿勢は0°と±45°で固定し,瞬間的に変化する気流を当て,そのときに加わる空気力を測定した.その結果,傘が風下側に傾いているときは,瞬間的に変化する気流と同様に空気力が増加するが,傘が風上側に傾いているときは徐々に増加する結果となった.また,傘が鉛直あるいは風上側に傾いているときは,合力の作用方向が急に変わる結果となった.

論文:「傘の静的空気力の測定」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaweam/2005/0/2005_0_42/_pdf/-char/ja
風雨が強い中で傘を差している歩行者の転倒事故は頻繁に起きている.このように,最も身近な道具の一つである傘の対風挙動は人間の安全に関わる問題といえる.傘に作用する空気力の基本的な特性を理解することを目的として風洞実験を実施した.本研究では傘に作用する静的空気力の測定を行った.測定結果から,風が吹いているときの姿勢である風上側に傘を傾けた状態では,作用する空気力は小さいが,空力モーメントが発生することが明らかになった.逆に傘が風下側に傾いている状態では,空気力の作用方向は傘の柄の方向と一致し安定している.

論文:「強風で壊れにくい傘の開発」
https://media.toriaez.jp/y2445/1.pdf
理想的な強風受け,しかも風向きの方向に自動的に傘の向きを傾ける機能を持ったものである.
傘の軸頂上に自由に回転する軸受を設けると同時に,バネの機能を付加すると,風が吹いていないときには,軸と垂直に傘を保持するが,強風が吹いてくるとその抗力により,軸は垂直のままで,傘は風向きに自動的に傾く.これにより,下向きの揚力が発生して,理想的な条件を満足することができた.


また、強風時における傘の使用について調査して、実際に試してみたことについて紹介しているサイトもありました。

サイト:解析してみました「風の強い日に傘をさす場合、どの角度がもっとも楽なのかを体で検証する。」
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20141001-cradle_bouhu/
結論
風の強い雨天は75°。
超強風の日は傘は諦めろ。
良い傘を使おう。

サイト:台風の風を体験 | NHK for School
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005320304_00000&p=box
実験映像で台風の風の威力を知る。風速13mで普通に傘をさすことができない。風速17mで傘が折れて飛んで行った。

まとめ 天気予報で使われる用語

時速100㎞(風速27.8m/秒)以上の風にも耐えるといううたい文句で販売されている傘もありますが、あくまで耐風テストとして行っているのであって実際に風が強い時は使用することを控えましょう。

以下の表は気象庁が天気予報などで使用する用語の説明になります。風速10~15m/sの「やや強い風」でも実際に傘をさすことは難しいでしょう。

台風が直撃して子供のころから台風の怖さを知っている沖縄の人は台風の時に傘を使用することはありません。傘を差しても横殴りの雨で全身がビショビショになりますし、すぐに傘が壊れてしまうからです。

いろいろな物が飛んできて危ないので、風が強い時はできるだけ外出することを控えるようにしましょう。
どうしても外出しなければならないときはレインコートを着て長靴など足元もケアして周りに気をつけながら出かけるようにしましょう。

「気象庁 風の強さと拭き方」一部改変
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kazehyo.html