傘を解析する

【傘のパーツ紹介】陣笠:傘の中の隠れた要素に迫る

傘のパーツに「陣笠」と呼ばれるところがあります。
陣笠と聞いてもどこの場所にあるパーツかわからない人が多いと思います。今回はそんなあまり一般の人には知られていない、そしてあまり気に留めることもないが実は重要なパーツである陣笠について紹介します。

「陣笠」の意味は?

そもそも「陣笠」という言葉の意味について、以下のような説明があります。

デジタル大辞泉「陣笠」の解説

じん‐がさ〔ヂン‐〕【陣×笠】
1 室町時代以後、陣中で主として足軽・雑兵(ぞうひょう)などが用いた笠。薄い鉄、または革で作り、漆を塗って、兜かぶとの代用としたもの。後世は外縁を反らせた塗り笠で、武士の外出に用いた。

傘のパーツの「陣笠」

傘の先部分を写している上記の写真の金属部分の付け根のパーツが陣笠です。

陣笠は、傘を差す際に雨が長傘の先端部分である『石突き(いしづき)』から伝わって中に雨水が漏れるのを防ぐために付いています。傘の生地の真上に位置する金属の部品が陣笠です。この陣笠によって傘の生地と骨格がしっかりと固定されます。

この名前の由来は、かつて戦の時に下級兵士が兜の代わりに被っていた笠と似た形状をしていることからきています。また、陣笠の下にある軽やかな生地の部分は「菊座(きくざ)」と呼ばれています。その名前の通り、菊の花をかたどった可愛らしい部品で、傘の生地が摩耗して傷つくのを防ぐ役割があります。

工程

陣笠の取り付け工程は、次の通りです。

・まず、傘の中央部に「菊座」と呼ばれる部品を配置します。

・それに続いて、雨水の浸入を防ぐための防水キャップを取り付けます。

・その上に陣笠を被せて固定します。一見するとぴったりと合っているように見えますが、実際には陣笠と中棒の間に微細な隙間があります。この隙間を埋めるために、「陣笠殺し」という筒状の道具を使用します。この道具を中棒に被せ、木槌で叩くことで、陣笠の先端部分が丸まって隙間を埋めることができます。
「陣笠殺し」という名前はかなりワイルドな印象を受けますが、実際には傘作りにおける重要な道具です。この道具も、穴のサイズによって複数の種類が用意されています。穴のサイズの違いはほんの数ミリで、中棒が木製の場合には微妙な太さの違いがあります。これにより、さまざまな傘に適切に対応できるようになっています。
「陣笠殺し」の名前の由来は、「かしめる」という部品を接合する作業から来ているようで、「シメる」の意味が転じて「殺す」という名前になったと言われていますが、その由来にはいくつかの説があります。
傘の中棒(骨)にはさまざまな太さがありますので、「陣笠殺し」も単一のタイプではありません。そして、これらの道具や傘づくりに必要な工具は、ホームセンターなどで手に入るものではなく、専門の職人が手作りすることが一般的です。

・最後に、陣笠をしっかり固定するために釘打ち作業が行われます。隙間がなく、しっかりと固定するためには、高度な技術が必要です。この作業は熟練した技術が求められるものです。

・こうして隙間を埋めた陣笠に、釘を打ち込んで固定します。まず、適切な大きさの穴を開け、その穴に釘を打ち込みます。ただし、穴を開ける際も釘を打つ際も、適切な工夫が必要です。穴が小さすぎると釘が入らず、大きすぎると釘が緩んだり曲がったりすることがあるからです。また、中棒の素材によって硬さが異なるため、適切な力加減が難しく、丁寧な作業が求められます。

まとめ

陣笠は縁の下の力持ちとして、雨が降った時に傘の中に入ってこないための大切なパーツです。
このようにパーツの一つ一つの名前を知ることで、使っている傘にさらに愛着がわくのではないでしょうか。わいてほしいな、と思いながら今回の記事を書いています。